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コラム

モデルからBIMを考える

2015.04.21

ArchiFuture's Eye                 大成建設 猪里孝司

BIMのM、モデルという観点からBIMを考えてみたい。モデルの定義はいろいろあるが、
「ある総体事象の中からある必要な属性、性能だけを問題にして、その側面に限り総体事象
と同じ働きを有するもの」*1という太田利彦の定義がしっくりくる。構造計算やシミュレー
ション用のデータも建築のモデルの一つだと考えると理解しやすいだろう。形状という側面
に注目したモデルが図面といえる。おそらく図面は、建築のモデルの中で最も多用されてい
るものであろう*2。図面は形状を視覚的にあらわし、適切なルールを定めることで形状だけ
でなく材料や構成などさまざまなことを表現することができる。しかし欠点も多い。今のと
ころ、BIMデータは建築という総体事象に最も近いモデルと考えてよいだろう。建築のモデ
ルからBIMを再考することで、BIMの意義が見えてくるのではないかと思う。

         理想住宅の平面図の粘土版(北メソポタミア テル・アスマル)*2

      理想住宅の平面図の粘土版(北メソポタミア テル・アスマル)*2


          「設計方法論」の表紙

          「設計方法論」の表紙


*1 太田利彦氏著. “設計方法論”. 丸善, 1981, p152
*2 スピロ・コストフ編. 槇文彦氏監訳. “建築家-職能の歴史”. 日経マグロウヒル社, 1981, p35

猪里 孝司 氏

大成建設 設計本部 設計企画部長