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ユーザー事例紹介

人が集う空間が求められるストアデザインの現在
<ima/ギャルド>

2016.10.13

BIMソフトウェア「ARCHICAD」を開発販売するグラフィソフトジャパンと月刊「商店建築」
とのコラボレーションセミナー「ストアデザインの現在 ~人が集う空間の魅力を探る~」が
先日、開催された。
会場となったのは、イトーキが運営する東京・京橋のイトーキ東京イノベーションセンター
SYNQA。社内外を問わずお互いの知識を交流させ、新しい価値を生み出すオープンイノベー
ション実践の空間である。SYNQAの入口となる1階のコワーキングスペースWork Caféに設け
られた会場は事前予約制で満席。受講者が熱心に耳を傾けていた。


店舗のライバルは競合店ではなくWeb
セミナーは、第一部の設計事務所imaの小林恭氏、小林マナ氏と月刊商店建築編集長の山倉
礼士氏とのトークセッション「“楽しさ”を感じるインテリアデザイン!!」、第二部のギャルド 
ユウ・エス・ピイ チーフデザイナーである山本豊氏による基調講演「魅力的なシーン創り
3D建築設計ツールを使った商業空間のデザインスタイル」、そして、第三部のグラフィソフ
トジャパンによる「提案のスピードが格段に速く! -新しい3Dプレゼンテーション手法の
ご紹介-」の三部構成で執り行われた。

     第一部のトークセッションの様子

     第一部のトークセッションの様子


第一部は山倉氏の進行により、imaの二人がこれまで手掛けた物件を平面図と写真をもとに解
説する形式で進められた。天井高約5ⅿ、面積約100坪の倉庫のような広い店内を村に見立て、
ファブリック、インテリア用品、子供服、バス用品、リネンなど、それぞれの商品棚を小屋の
ように点在させて客の回遊を狙い、さらに店の奥にミシンコーナーやキッチンスペースを配し
た「marimekko NY」。

     「marimekko NY」

     「marimekko NY」


来場者に気軽に触れてもらうように、あえて通路際に商品である麻とウールのファブリックを
吊るしたフィンランドのファブリックメーカー「LAPUAN KANKURIT」の展示ブース。イメー
ジキャラクター、ファミちゃんの顔を模して平面構成した店内に“TOUCH=触る”をテーマに、
客が商品を袋から出して自由に触れられるコンテンツを散りばめた「familiar代官山」。通販
ブランドの特性を活かし、カタログの世界観を実店舗に再現した「Do CLASSE自由が丘店」。
そして、メイン動線を黄色に、各ブース内の床を白にすることで、客の誘導と展示品の見やす
さを確保したInterior Lifestyle Tokyoでの「キュレーションストアー」の5つの事例を紹介。

     Interior Lifestyle Tokyoでの「キュレーションストアー」

     Interior Lifestyle Tokyoでの「キュレーションストアー」


     設計事務所ima 小林 マナ 氏(写真左)、小林 恭 氏(写真右)

     設計事務所ima 小林 マナ 氏(写真左)、小林 恭 氏(写真右)


imaの小林恭氏、小林マナ氏は、「これだけWebが発達してきている現代において、リアル店
舗が商品を売っているだけならWebでいいとなってしまう。客を呼ぶためには、そこに行くか
らこそ体験できる要素を入れ込むことが重要だと思います。」と語り、これを受け、山倉氏は、
「いまから7~8年前に店舗のライバルは競合店ではなくWebだと言われていました。当時は
空間デザイナーにそれを押し付けるのは、どうなのだろうと考えていましたが、最近、空間デ
ザイナーと施主とが一緒になって客に体験してもらう場を作ろうとすると、こんなにも新しい
ことができるのだと実感しています。いまの時代、より多くの人に来てもらうためには、こう
した“楽しさ”を感じる空間が求められているのではと思います。」と結んだ。

     月刊商店建築 編集長          ギャルド ユウ・エス・ピイ
     山倉 礼士 氏                チーフデザイナー 山本 豊 氏

     月刊商店建築 編集長          ギャルド ユウ・エス・ピイ
     山倉 礼士 氏               チーフデザイナー 山本 豊 氏



店舗設計におけるARCHICADの優位性
第二部では2001年から3年間ミラノに赴任し、そこでARCHICADと出会い、帰国してからも
使い続けているという山本氏による基調講演が行われた。山本氏は、まず北京の大型商業施設
「JOY CITY」の設計事例をもとに、そこで行った魅力的なシーン創りの手法について、こう
説明した。
「施設全体を街に見立て、広場を中心にレストランや雑貨店を配し、そこに作り物ではなく本
物を感じさせる仕掛けを施していきました。吹き抜けの大空間には赤いトラックを置き、また
ドイツで腐敗しないように加工した巨大な天然木をシンボルとして設置しています。植栽もリ
アルにこだわるために、専用の給排水システムも導入しました。また、一日中過ごしてもらえ
る施設にするべく、朝、日中、夕方、夜と、時間の経過とともに館内の照明の照度と色合いを
変化させています。ほかにも、中央広場の環境とテナントのデザインに統一感を持たせるため
に、各テナントに冊子を配布して、理解と共感を促すこともしました。人は何を目的に商業施
設に足を運ぶのかを考えると、モノやコトよりもキモチこそが大切なのではと思っています。
特にここ数年は、効率や生産性だけを追求するのではなく、MD、環境、運営サービスのバラ
ンスを整え、キモチを大切にすることで魅力的なシーンを創れるのだと感じています。」
続いて、山本氏は“初期段階でのイメージ化”、“ブランド多店舗展開の例”、“大型商業施設計画
の例”の3つの柱でARCHICADの実践テクニックを披露。“初期段階でのイメージ化”について、
「初期段階からプランを3D化し、空間を立体的に捉えるバーチカル検証、外部から見た内部空
間、内部空間から見た外部などの景観検証、どの場所をどう活用すると有効なのかを検証する
MD計画検証が行えます。そうすることで、チーム内でのシミュレーションや検討意思決定を
迅速に進めることができます。さらに、クライアントや施工関係者とも気持ちを共有すること
もできる。これが、新しい創造へと繋がるのです。」と語った。
“ブランド多店舗展開物件の例”では、ブランドの精神を空間デザインで表現するために、デザ
インディテール検証、プロトタイプ、構成ユニットデザイン検証、空間検証の4つを繰り返し、
言葉だけではなく全体を見える化してマスターデザインコンセプトを構築していく流れを説明。
「これまでは、開発企画→マニュアル作成→物件視察→レイアウト→基本設計という流れでし
たが、ARCHICADを使えば、レイアウトが終わった時点で基本設計も出来上がっている。
以前はレイアウトから基本設計まで数日間かかりましたが、半日程度でできてしまう感覚があ
ります。」と語った。

     山本氏による基調講演の様子

     山本氏による基調講演の様子


そして、“大型商業施設の例”では、クライアントに3Dモデルを上空から見せたり、内部空間を
歩いて見せたり、素材を入れ込んでみたりなど、プレゼンテーションの場におけるARCHICAD
の優位性について解説。
最後にまとめとして、「生産性とデザインクオリティーの向上、シミュレーション検証による
高いデザイン性と機能性の創造、とりわけ図面が読めないクライアントに対する効果的なプレ
ゼンテーション。これらを実現してくれるのがARCHICADです。数年後のARCHICADは、さら
に進化していくことでしょう。ただ、一方で自分はバーチャルの世界ではなく、現実の世界の
人間なので、気持ちや共感する、共鳴するといったことを大事にしながら、これからも仕事を
していきたいと思っています。」と語った。


ヨーロッパでは店舗設計の分野にも多くのユーザーを持つARCHICAD
第三部では、グラフィソフトジャパンより、ハンガリーの地で3Dモデリングソフトとして誕
生したARCHICADの歴史と、最新版ARCHICADの製品説明がなされた。ARCHICADに搭載さ
れている高速レンダリングエンジンCineRenderによるパース作製、BIMプレゼンテーション
アプリケーションBIMxによる2Dから3Dへの切り替えやデータの自動書き換え、数値の自動
計算家具配置オリジナル家具制作などの基本的な操作方法のデモンストレーションが示さ
れ、受講者は最後まで熱心に耳を傾けていた。
パース作製ができプレゼンテーションツールとなりさらに一つ手を加えるだけですべてが
修正される高い設計効率性を誇る高速・簡単操作のBIMソフトウェア「ARCHICAD」。現在、
日本国内ではゼネコンや組織設計事務所が主なユーザーだが、本場ヨーロッパでは店舗設計で
も広く使われている。今後も、あらゆる建築設計の分野で、その優れた力を発揮してくれるこ
とだろう。

「ARCHICAD」の詳しい情報は、こちらのWebサイトで。