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コラム

4次元マテリアル

2016.08.23

パラメトリック・ボイス           アンズスタジオ 竹中司/岡部文

岡部  北米では現在、4次元マテリアルに注目が集まっている。4次元マテリアルとは、マテ
    リアル自身が自己組織的に変形する素材の事を示す。
 
竹中  つまり、マテリアル自身に「時間」という概念が埋め込まれているんだ。そして、こ
    れを実現しているのが、4次元プリンタという次世代技術である。
 
岡部  4次元プリンタとは、時間と共に形状が変化する立体物をプリントできる装置である。
    主には、水や空気にさらされた際や、気温の変化に呼応して形を変化させるマテリア
    ルを生成することができる。
 
竹中  例えば、ハーバード大学Wyss InstituteとハーバードSEAS(John A. Paulson
    School of Engineering and Applied Sciences)が中心となって発表した論文「4D
    printing」が記憶に新しい。プリントされた4次元マテリアルは、水の中でフワリと
    広がり、まるで生き物のような動きを生み出す。
 
岡部  原料には、ヒドロゲルの合成インクが用いられていることが多い。このインクに、あ
    らかじめ、4次元操作が可能なコードがプログラムされている仕組みだ。
 
竹中  これが人工物には、到底見えないね。
    植物が周囲環境に対して柔軟に呼応する様子にヒントを得て開発された技術だ。
 
岡部  まずは医療の世界で、人工臓器のための技術として開発が進められていくと考えられ
    る。そして近い将来、4Dプリンティング技術は、建築の世界でも大きな可能性を広
    げてゆくだろう。
 
竹中  変化に対して受動的だった建築マテリアルは、時間軸を取り込むことで、これまで想
    像もしえなかった進化を見せるにちがいない。
 
岡部  風の変化や、陽のうつろい、人々の営みの変化などとゆっくりと対話する、まるで森
    の木々に包まれたような、豊かな表情をもった空間を体験できるかもしれない。
 
竹中  日常、我々が目にする建築の姿は、ガラス、鉄、コンクリートといったマテリアルの
    誕生によって、大きな変貌を遂げて生まれた姿であると言える。そして、こうした4次
    元マテリアルの可能性は、まったく新しい建築の姿を想像させてくれるのである。

図版1 4D Printing: Shapeshifting Architectures
©A.S. Gladman, E.A. Matsumoto, J.A. Lewis from Harvard University / Wyss Institute
※上記の画像、キャプションをクリックすると画像の出典元のVimeoへリンクします。

図版1 4D Printing: Shapeshifting Architectures
©A.S. Gladman, E.A. Matsumoto, J.A. Lewis from Harvard University / Wyss Institute
※上記の画像、キャプションをクリックすると画像の出典元のVimeoへリンクします。


図版2 マテリアル本来の性質を利用して自己組織的な素材を開発するSelf-Assembly Lab, MIT
©Self-Assembly Lab, MIT+ Christophe Guberan + Erik Demaine + Autodesk Inc
※上記の画像、キャプションをクリックすると画像の出典元のSelf-Assembly Labへリンクします。

図版2 マテリアル本来の性質を利用して自己組織的な素材を開発するSelf-Assembly Lab, MIT
©Self-Assembly Lab, MIT+ Christophe Guberan + Erik Demaine + Autodesk Inc
※上記の画像、キャプションをクリックすると画像の出典元のSelf-Assembly Labへリンクします。

竹中 司 氏/岡部 文 氏

アンズスタジオ /アットロボティクス 代表取締役 / 取締役