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コラム

B.Information元年

2017.04.06

ArchiFuture's Eye                 日建設計 山梨知彦

Informationの頭に、Buildingを意味するB.をくっつけて「B.Information」(以下、B.Info.)
と綴って、「ビンフォメーション」と読んでいただきたい。2017年は、B.Information元年に
なるのでは?と、僕は思っている。
 
ビルディング・インフメーシン(以下、B.Info.)と聞いてArchiFuture Webの読者ならば
まず思い浮かぶのは、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデル)だろうか。BIMが3次
元のデジタルモデルと柱や梁といた基礎的なB.Info.を連携させて、建築の設計や施工の効率
化、高品質化を目指して注目を集めているのはご承知の通りだ。2009年に「BIM建設革命」を
執筆しBIMを日本に紹介し、2009年を「日本のBIM元年」と位置付けた張本人である僕自身も
驚くほど、BIMは広く注目されるものとなった。加えてそこに、コンピュテーショナルデザイ
ンといったコンピューター上のデジタルデータを利用したデザイン手法の隆盛が重なっている。
建築のデザインにおけるデジタル化は一気に加速され、広がっている。
 
一方で、現状をよく観察してみると、データの転用は多くの場合3次元の形体情報にとどまり、
肝心の建築情報=B.Info.の利用が今一つ進んでいない。多くのケースで3次元の形体情報はデ
ジタル化されることにより、例えばBIMの形体情報が各種環境シミレーシンやCGへと転用
されている状況はしばしば目にするところだ。しかし、建築の世界ではプロジェクト名と延べ
床面積や有効面積などといった基礎的なB.Info.すらが、きちんと紐づけされてデジタル情報化
されていない。建物の有効率のリスト化や、高さの比較一覧を作成するといった基礎的な調査
ですらコツコツと人手により調べなければならない状況だ。BIMが提唱している3次元のデジ
タル形体情報に紐づけする以前の段階で、各種建築情報のデジタル化は進んでいない。このま
まの状況でBIMを進めても3次元形体に大きく軸足を置く現在の状況はそう大きくは変われず、BIMの将来は暗い。B.Info.を積極的に使って、かたちのみならず、建築にまつわる人々のアク
ティビティや、B.Info.自体を僕らはデザインしていかなければならない。
 
そんな認識から、現状のBIMの制約にとらわれることなく(IFCはBIMの足かせが重く、動きづ
らそうにも見える)建築情報のデジタル化、共有、再利用を進めていくことを広く提唱し、広
げていくために、B.Information(B.Info.)という言葉を作ってみた。
(関連イベントが、日建設計東京ビル1階ギャラリーにて、4月10日から5月26日まで、
B.Information展-Beyond BIM & Digital Design-」として開催される予定。入場無料、
 9:10~17:00、土日祝日休館)
 
ぜひ皆さんも、B.Informationという言葉、自由に使って、建築情報に目を向けてみてくださ
い(どこかの野暮な方、使用権など抑えたりしないでくださいね 笑)。

 図1:On the waterのBIMを用いた環境シミュレーションの例

 図1:On the waterのBIMを用いた環境シミュレーションの例


 図2:On the water 全景

 図2:On the water 全景

山梨 知彦 氏

日建設計 チーフデザインオフィサー 常務執行役員