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コラム

次世代への期待

2015.06.02

ArchiFuture's Eye               ARX建築研究所 松家 克

今年の「Archi Future 2015」の企画会議が、いよいよ5月から始まった。新たに構造家で東京
藝術大学准教授の金田充弘氏に委員参加をお願いし、カリフォルニア大学での経験やARUPの
現在のグローバルな視点での企画提案を期待し、胸を膨らませている。
今年も魅力ある企画満載で秋に臨みたい。

最近、私が参加するチーム「ARX(プラス)」の子息が、ベトナムのハノイで料理店を開業し、日
本のテレビ局や新聞の取材などもあり、なかなかの評判だと聞いた。このことで、ふと思いだ
したのが、ベトナムに初めて行った日のことである。それは、20数年前の内田祥哉氏を団長と
する建築学会の建築視察だった。
関西国際空港からの便は、ベトナムと日本の関西国際空港を結ぶ直行第一便。ベトナムの若き
運輸大臣が同乗し、ホーチンミン市のタンソンニャット国際空港では歓迎の花を手渡され、多
くの取材陣もいたと記憶している。
この時期のベトナムは、中央銀行の積み上げられたドンの札束の山に驚かされ、街中も活気に
あふれていた。ベトナム戦争で多くの働き盛りの世代を失ったにも係わらず子供たちの笑顔を
も明るく、これからの発展を予感させるものでもあった。

 レストランからハノイの湖を望む(写真は3点とも、提供:増田兼泰)

 レストランからハノイの湖を望む(写真は3点とも、提供:増田兼泰)


この時に、現在は総合地球環境学研究所教授の村松伸氏に案内していただいた集合住宅と街中
の風景を今でも鮮明に覚えている。村松氏は、ベトナムのハノイの住居系の調査をされていた
と記憶している。見学した市街地や集合住宅/共同住宅からは、軸(AXIS)で構成される西洋型
の都市形成とは異なる日本に繋がるアジア型のコンテキストを強く感じた。
世界遺産のモロッコのフェス旧市街などにも通じるが、暑くて冷房のない自然環境を風の通り
道や煙突状の吹き抜けで空気の流れつくり出す工夫などは、今の日本の環境対策に繋る。機械
や空調に頼らずに暑さを凌いでいることと、水回りの清潔感に感嘆させられたことを鮮明に記
憶している。

これらの魅力あるアジアのテイストを街づくり計画や住居計画に反映させるとすると三角定規
やT定規で描き上げる軸(AXIS)型の世界ではないことを実感した旅でもあった。当時、アジア
型の街づくりを説得ある構想案まで昇華させる方法は、コンピュテーショナルな手法だと漠然
と考えていた。
日本の寺社での的屋()の複雑な縄張りは、尺棒1本で決めるというが、群れ会う人の波も阿吽の
呼吸で秩序が守られている。阿吽の呼吸や生活、自然発生的な道や街、人やモノの流れ、自然
分析などのベースとなる各種のシミュレーションは、莫大なデータ処理によるコンピュータ分
析が絶対必要条件となる。
現在、各所で試みられている温熱、風流、水流、植物や樹木の成長、日照、人の流れなどのシ
ミュレーション手法がアジア型の魅力ある街づくりへと発展し、設計効率や施工のスピードア
ップだけではなく、生活する人の合意形成の大きな支援になると考え、次世代に期待している。