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コラム

成長するコンピュテーショナル言語

2019.01.15

パラメトリック・ボイス           アンズスタジオ 竹中司/岡部文

岡部  Siri、ついに2019年がスタートしましたね!
 
Siri   2019年1月1日火曜日、元日でした。
 
岡部  ……。
 
竹中  コンピュテーションの分野においても、ロボティクスの分野においても、「自然らし
    さ」や「人間らしさ」を扱うことは、とても難しい。人工知能と言語学の一分野であ
    る、自然言語処理の分野においても、それは最大のテーマである。
 
岡部  私たちが日常的に使っている言葉は、曖昧さを含んだコミュニケーションを生み出す。
    画一的なプログラミング言語に対して、これを「自然言語」と呼んでいる。そして、
    この自然言語をコンピュータに処理させる手続きを総称して、「自然言語処理」と呼
    ぶ。ロボットの進化には、欠かせない研究分野だ。
 
竹中  一般的な言語処理では、まず、対話相手の言葉を最小単位に分割して形態素解析を行
    う。そして、これの文構造を扱うため構文木を描き、さらには意味解析、文脈解析を
    行うことで理解させる。その際には、私たちが日ごろ使っている言語を大量に記録し
    蓄積した文書集合(コーパス)も必要不可欠だ。けれど、会話の中では、複数の意味
    を持つ言葉や、比喩や言い換えなどがあって、目の前にしている相手の状況に合った
    返答を導くことは、とても難しいよね。
 
岡部  そもそも、「自然らしさ」や「人間らしさ」って何だろうか。
 
竹中  自然らしさと人間らしさ―― そんな二つのキーワードから生まれた自然言語処理
    に関わる面白い研究がある。それが昨年末にMITから発表された「semantic parser」
    という、成長するAIの言語処理技術だ。
 
岡部  まったく何もしゃべれなかった赤ちゃんが、身近な人たちの言動をつぶさに観察しな
    がら、ゆっくりと言葉を習得してゆくように、子供の言語獲得プロセスを模倣した
    手法である。コンピュータに、字幕付きの映像を観察させることで、それに関連した
    ワードをオブジクトとアクシンに関連付ながら自らが言葉を習得するアプロー
    チだという。
 
竹中  60年代に生まれたSiriの祖先とも言えるELIZAや、90年代に入って導入されたマシン
    ラーニングの手法、そしてインターネットの普及などにより飛躍してきた自然言語処
    理は、とても「人間らしい」成長プロセスで、さらなる発展を見せそうだね。
 
岡部  コンピュテーションの世界においても、ロボットの世界においても、自然らしさをト
    レースするのではなく、自然らしさを生成するプロセスを設計する。次の時代のアプ
    ローチには、日々周囲を観察しながら学習する子供のように、プリミティブで柔軟な
    視点が大切だと思う。
 
竹中  文明社会の核となる「言語」という偉大な発明は、常に交わりながら変容し、多義で
    ある。対話の中で姿を変え、カタチを留めずに大きな可能性を秘めているのだ。この
    曖昧さを容認した仕組みこそが、文明に進化と成長をもたらす源にちがいない。

 ※上記の画像をクリックすると画像の出典元のMIT NewsのWebサイトへリンクします。

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