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コラム

BIMとFMと建築のデジタル情報

2019.02.05

ArchiFuture's Eye                 大成建設 猪里孝司

前回のコラムで予告させていただいた2月19日(火)に開催する「BIMの日2019シンポジウ
ム」(主催:日本建築学会 情報システム技術委員会)はおかげさまで早々に定員に達し
し込みが終了した。参加予定の皆様にこの場を借りて御礼申し上げる。京都大学の川上先生は
じめ、講師の先生方の人気の賜物である。同時にBIMへの関心の高さを表していると感じてい
る。関係者の一人として嬉しい限りだが、同時に身が引き締まる思いである。
 
2月20日(水)から3日間、「ファシリティマネジメント フォーラム 2019」(主催:JFMA)
が開催される。このWebの”ヘッドライン 最新10行ニュース”でも、1月9日付で取り上げられ
ていたので、ご存知の方も多いだろう。今回のテーマは「For the Future! ”FMの未来、新た
な価値を目指して”- 時代が変わる。人・組織・社会を支えるファシリティマネジメント -」
である。基調講演の竹内弘高先生(ハーバード大学)との高橋正巳氏(WeWork)をはじめと
して広くFMに関わる方がお話になる。一口にFMといってもその活動は多岐にわたる。FM
に興味のある方、BIMとFMは親和性が高いとお考えの方は是非ご参加いただきたい。
2月21日(木)には、私も「ファシリティマネジメントのためのBIM活用ガイドライン」とい
うテーマでBIM・FM研究部会の成果について発表予定である。
 
BIMへの関心が高まているのは、設計や施工など建築をつくり出す側だけの話ではない。建
築を使う側の人たちの間でもBIMが注目を集め始めている。「BIMについて話を聞きたい」
「BIMのデータを納品して欲しい」といた発注者からの依頼が少なからずあるようだ。以前
からBIMはFMで威力を発揮すると主張してきた私としては有難いことだが、手放しで喜べな
い。設計や施工の段階で作成されたBIMのデータが、そのままFMで利用できる訳ではない。
FMの中のどの業務で利用するのかどのような情報をBIMから受け取りたいのかなど受け取
る側でも相応の準備が必要である。また引き渡す側でもFMについての理解が不可欠である。
BIMとFMの橋渡しとなるようJFMAのBIM・FM研究部会では「フシリティマネジメントのた
めのBIM活用ガイドライン」の作成を進めている。多くのファシリティマネジャーが、さまざ
まなFMの場面でBIMを活用してくれることを期待している。

BIMとFMが連携することの効果は、単なるFMの効率化だけではない。BIMによる建築のデジ
タル情報には、単なるコスト削減や効率化以上の価値が潜んでいると考えている。残念だが
BIMで建築のデジタル情報をつくり出している側ではまだその価値を見つけることができな
いでいる。AIやIoTが大いに役立っている分野もあるが、またその恩恵に浴せず試行錯誤して
いる分野も沢山ある。同じ図式が建築のデジタル情報にも当てはまる。建築のデジタル情報が
大きな価値を生み出す分野があるはずである。建築をつくり出す設計者、施工者と建築を使う
利用者、ファシリティマネジャーがBIMを介してつながり、建築のデジタル情報の価値を探し
出してもらいたいものだ。ファシリティマネジャーにとって、BIMは建築のデジタル情報を入
手する手段といえる。BIMの人たちと一緒に、建築のデジタル情報の鉱脈を探してくれるフ
シリティマネジャーを大募集している。

猪里 孝司 氏

大成建設 設計本部 設計企画部長