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コラム

建築BIMの時代3 ゴールとガイド

2019.09.10

ArchiFuture's Eye                 大成建設 猪里孝司

8月30日に日本ファシリティマネジメント協会(JFMA)から「ファシリティマネジメントの
ためのBIMガイドライン」
が発行された。筆者が部会長を務めるBIMFM研究部会でまとめた
ものである。フシリテマネジメント(FM)でBIMを活用するためのプロセスや関係者の役
割、BIMが提供可能な建物情報について解説するとともに、BIM実行計画(BEP)のひな型を
掲載している。建築の発注に関わる方々シリテマネジャーの皆様FMをBIMの出口の
一つとして考えている人たちにご覧いただきたい。

2019年9月2日に第3回建築BIM推進会議が開催された。第3回会議の中で、委員のどなたかか
BIM推進はあくまでも手段でありどのような目的目標のためにBIMを推進するのかを参
加者が共有する必要があるという発言があった。正鵠を射た意見だと思う。ただ、この段階で
目標についての議論を先行させると、総論賛成・各論反対となり話が進まないという危惧があ
る。同床異夢かもしれないが、BIMの推進を通して同じ夢を見られるようにしたいものである。

また、複数の委員から発注者はBIMを望んでいるのか、発注者のメリットは何かという意見が
あった。こちらも当を得た意見である。そもそも、BIMが進んでいるといわれている国々では、
建築を作らせる人たち(発注者側)がBIMの利用を求め推進している。一方、日本では建築を
作る人たち(受注者側)がBIMを推進している。BIMを推進する受注者側は、発注者側にとっ
てのBIM活用のメリットを示していく必要があると思う。

JFMAには発注者側、受注者側双方が参加している。これらの発言を聞き、あらためてJFMAお
よびBIMFM研究部会の役割を認識した。FMとBIMを連携させることはBIMを介して発注者
と受注者をつなげることに他ならない。施設の計画段階からBIMを活用したライフサイクルマ
ネジメントを実施することが、発注者側のメリットになると考えている。維持管理の効率化だ
けではない、受注者側のメリットを提示していきたいと思う。

話は変わるが、先日生まれて初めて富士山に登った。高山病や体力に不安があったが、ガイド
による随所での適切なアドバイスと十分な休憩を含んだペース配分のおかげで、初心者でも無
理なく登頂することができた。山頂というゴールとそこに向かうルート、さまざま障害を熟知
しているガイドの力は偉大であった。一見困難な道のりも、明確なゴールと計画の着実な実施
を支援するガイドがいれば実現可能だということを再認識した。BIM活用も同じだと思う。問
題はガイド不足だ。BIMを活用し実績を上げている方々は、さまざまな試行錯誤の末に成果を
上げていると思う。その経験を活かしBIM実践のガイドとしても活動するとともに、その知識
を共有させていただきたい。「ファシリティマネジメントのためのBIMガイドライン」はガイ
ドとしてはまだまだ不十分であるが、中間地点とそこに至るルートを示していると考えている。
さまざまな個人、団体の取り組みが、建築BIM推進会議の活動を通して共有されることが、建
築BIMを推進することになる。

猪里 孝司 氏

大成建設 設計本部 設計企画部長