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コラム

BIM(Building Information is MONEY)

2015.09.01

ArchiFuture's Eye                 大成建設 猪里孝司

Amazonの中古本をよく利用する。古書収集という高尚な趣味があるわけではなく、単に経済
性と利便性が理由で利用している。1円の本を買う(送料を払うので実質は1円でないが)こと
も少なくない。読むことが目的なので、”コンディション欄”を参考に状態のよさそうで、出来
るだけ安価なものを選んで購入している。私が気にするのは、書き込みの有無や本文の汚れく
らいなのだが、この欄には本文やカバーの状態とともに、箱や帯、カバーの有無や初版かどう
かなどが記述されていることが多い。箱や帯、版が古本の価値を測る尺度の一つになっている
からであろう。PCを中古品として売却する際も、箱やマニュアル、付属品の有無で買取価格に
差が出ると聞いた。

書籍にしてもPCにしても、対象物自体ではなく、周辺物の有無や状態が価格に影響しているわ
けだ。対象物の扱いは周辺物の扱いと相関するだろうとの前提のもと、対象物がどのように扱
われてきたかを推測する手段として、周辺物が利用されていると言える。

建物についても同様だとの考えが一般化することを期待する。BIMモデルを建物本体の周辺物
の一つとして考えてみる。「検査済証」が適法性を証明するものであれば、FMによる維持管理
の記録や改修履歴とそれを反映したBIMモデルは、建物がきちんと管理され、大事に扱われて
きたことを証明するものである。最新の状態を示す適切に更新されたBIMモデルがあれば、
デューデリジェンスにかかる工数は下がるはずである。BEMSの記録とBIMモデルをもとにした
シミュレーションを比較することで、エネルギー面の性能評価も可能である。

これまでは建物の売買は、不動産業やデベロッパーなど土地や建物の専門家が主役であった。
これからは投資家視点の重みが増す。投資家に応えられるBIMを実践することが建物の値段を
上げることになる。まさにBIM (Building Information is MONEY)である。「BIMモデルが
あったから高く買ったが十分もとが取れた」「BIMモデルがあったから高く売れた」という事
例が出てくることを期待している。

猪里 孝司 氏

大成建設 設計本部 設計企画部長