Magazine(マガジン)

コラム

進化するICTデザイン(3)~つくるBIMの新たな発見

2019.12.05

パラメトリック・ボイス            安井建築設計事務所 村松弘治

日々、設計に携わりながらあれやこれやとICTやBIMとの関わりかたに思いを巡らせていると、
徐々にではあるが確実に手法やプロセスが変化していることに気が付く。特にプロジェクトの
入口部分での活用には、都度新たな発見があり興味深いものを感じる。例えば、Rhinoceros
+GrasshopperやRevit+Dynamoを用いた新たな設計手法は情報とデザインを結び付け
くの課題を同時並行かつ短時間で片づけてくれるし、ARやMRと組み合わせる景観スタディー
などとともに確実なプロジェクト判断に導いていることを実感する。このプロセスの組み立て
は、設計部門+ICT部門の若手が主体的に行っているのだが、彼らは常に合理的な視点で効率
的に最適解にたどり着くための手法を考えており、このことは自動設計化やコンカレント設計
の進展にも大きく貢献し、時にはこれまでの想像を超える造形の提案にもつながっている。こ
のように機知に富んだ発想と利用は、プロジェクトの質を確実に向上させ、創造性に溢れた造
形を引き出しながらプロジェクトの価値を高め、クライアントニーズの満足や社会貢献(例え
ばSDGsの可視化など)にもつながっていると思う。ということで今回は、前回の「くみたて
るBIM」
に続き、その先のステップである設計領域の「つくるBIM」、とりわけ基本設計にお
ける新たな取り組みと発見について触れることにする。

基本設計のICT/BIM
最近は事業計画の確実な最適化達成のための基本設計重視、いわゆるプロセスのフロントロー
ディング化は必須とされてきている。そのためのツールとして最有力視されているのがICT/
BIMであろう。また、基本設計はプロジェクトの骨格を決めるとても重要なフェーズであり、
クライアントにとっても大きな決断が迫られる緊張の場面が続くことになる。したがって、決
断を導きだすための客観的かつ論理的な判断や事業全体を見据えた先読みの判断ができる材料
が必要になるのであるが、これまでは設計サイドの経験・実績・創造力に委ねられるケースが
多かった。これに対し、ICT/BIMを用いた定性的かつ定量的比較検討や各シミュレーションに
よる情報とカタチの可視化は、従来の手法と合わせて、最適解の確実な共有と後戻りのないス
ムーズなプロセス運営を可能にするとともに、プロジェクト全体の効率性の向上の達成につな
がると期待されている。すなわちプロジェクトにおける「基本設計型ICT/BIM」は、革新的展
開力や効果を生み出すことにつながると予見できる。

情報をカタチにする
このプロセスにおける本質は、与件やクライアント要望を確実に整理しながらカタチに結び付
けるところにある。さまざまな情報とカタチを結び付けるために(変換するために)ICTツー
ルを利用するわけであるが、よりその効果を引き出すために、基本設計を2段階に区分する。
前半は設計与条件やニーズを整理・検討・組み立てるために、後半は適切な機能を盛り込むた
めに最適なICT/BIMツールを活用するのだ(図1参照)。これを実際のプロジェクトで活用す
ると、ケース❶~❺のような結果が得られるのだが、それぞれに新しいICT手法を用い、創造
性と可能性を広げていることがわかる。共通するのは同時並行的に実施される検討プロセスで
あり、その結果と合わせると大きな有用性が確認できる(図2参照)。
ケース❶
環境シミュレーション快適度温熱・照度コストそしてLCCの情報・データパラメーター
とRevitモデルを連携し、RevitやForgeにて全体像を確認するプロセス。部位情報と全体情報
を連動させることで、計画初期段階の空間の最適性や価値判断を容易にしている。有効性を高
めるために、xR(VR/AR/MR)の実装にも取り組んでいる。
ケース❷
Excel-Revit+Dynamo連携により設計与条件や要望、計画情報(面積、仕上など)などの情報
を3Dモデル上で一元管理するプロセス。3Dモデルデータの上で与件と成果の自動比較や条件
変更への即座の対応など、様々な点で効率化を推進する。完成後、ユーザーの活用度をも拡大
する。
ケース❸
Rhinoceros+Grasshopperを活用して必要な情報をモデル化し法規制チェックや環境解析な
どの最適化を同時並行で実施するプロセス。情報とカタチをビジュアル化することで、論理的
判断を促進させる。またパラメトリックデザインとxRを組み合わせることで、実現性への判
断を高めている。
ケース❹
パラメトリックデザインで構造フレームの部材の最適化を検討し、同時並行的に全体‐部分、
構造‐意匠の最適化を行うプロセス。3Dプリンターによる模型デザインを検証している。
ケース❺
基本設計後半は各部位の組み立てと適切な機能を盛り込む基本的統合BIM(機能の統合、整合
性確認、コストバランスや与条件チェック)が中心になる。このフェーズは各組織における実
績・経験の蓄積や練度・精度もかなり向上しており、BIM設計プロセスやLODマニュアルも確
立されてきている。今後はむしろ、維持管理など、先を見据えたデータ構成が主流になりつつ
ある。また、基本設計前期で行ってきたスタディーの精度を確認するために、各シミュレー
ションを行い、設計内容や結果を担保することも必要だろう。

このように同時に環境+技術+感性を統合し、技術と創造の組み合わせができるのが「基本設
計型ICT/BIM」の特徴と言えよう。つまりこれらをうまく利用することで、客観的視点でカタ
チやデザインを論じることもできるし、基本設計重視型設計プロセスを促進させ、設計精度を
向上させるとともに事業計画の価値を明確にし、クライアントや発注者により多くのメリット
を付与することも可能になる。まだまだ潜んでいる多くの有益な利用価値を引き出すことで、
近い将来、働き方手法や設計プロセスの大きな変革にも影響を及ぼすと考える。

誰がICT/BIMを扱うべきか?
ICT/BIMは、新たな造形・建築を生み出すツールになっているという認識から、とりわけ基本
設計においては設計者が主体的に、自らの頭脳の一部として活用するのが理想である。とは
言っても、設計フェーズで取り組むべき課題も多い。設計者が快適にBIM環境を推進できるよ
う、専門的知識が必要なところは、ICT部門のバックアップや外部の知恵と技術を積極的に取
り入れながら、ストレスをかけずにステップアップしていくことが肝要である。また、実際の
設計プロジェクトで、設計者がICT/BIMを操ることも大切である。彼らの創造やイメージの拡
大、客観的課題の整理、最適解への誘導への取り組みは、BIM設計プロセス上の課題の改善や
新しいプロセスや手法への取り組み展開にもつながるし、モチベーションも高まる。
このように、日ごろから設計とICTやBIMの関係性を考え、使い続けることは、新たな発見に
出会い、スピンアウトする画期的活用の展開にもつながっていくのではないだろうか。

  図1 情報をカタチにするためのICT/BIMプロセス

  図1 情報をカタチにするためのICT/BIMプロセス


  図2 基本設計のICT/BIMケーススタディ

  図2 基本設計のICT/BIMケーススタディ

村松 弘治 氏

安井建築設計事務所   取締役専務執行役員   東京事務所長