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コラム

移動空間と都市のカタチ

2020.01.28

パラメトリック・ボイス 

             アンズスタジオ / アトロボテクス 竹中司/岡部文

岡部  技術の進化や、それらが引き起こす色々な現象によって、都市の形は自由に、そして
    生き生きと変化する。ここ数年、建築分野だけではなく、多くの企業が実験的な都市
    計画について率先して提案を行っている。今年はじめエレクトロニクスショーCES
    2020で発表されたトヨタ「コネクティッド・シティ」プロジェクトもそのひとつだ。

竹中  クルマの新しい技術が、クルマと建物そして人の関係性をどのように変化させてゆく
    か。都市をつくる3種類の「道」をテマにトヨタが建築家ビャルケインゲルス氏
    と共に未来都市を描こうとしているね。

岡部  そうだね。完全自動運転用の道路を用意して、モノの配達や移動用店舗についても考
    えている。たとえばカルフォルニア州に拠点を置くロボマート社が開発した生鮮食品
    を届ける無人型移動販売店舗のような、新しいアプローチのマーケットも関わってく
    るのだろう。

竹中  ここ数10年ほどの間であまり見かけなくなった畑の直販所のように、新鮮でとれた
    ての、その土地に根ざした食品を、店に出向かなくとも手に取れるシステムは実に魅
    力的だよね。こうした移動空間が都市の姿をどう変えてゆくのか。

岡部  商品やサービスを売り歩くシステムと言えば、江戸の街を特徴的に賑わせていた「振
    売(ふりうり)」を思い出す。振売はある種の移動用店舗であるから、江戸の街絵図
    には必ずといっていいほど描かれているね。売っていたのは、生鮮食品だけでないよ
    うだ。工具を担ぎ、道具の修理を行うサービスをする者もいたりして、「守貞謾稿」
    (喜田川守貞 著、1837年から1867年)によればその種類は数十種類以上にまで及ん
    でいたという。

竹中  変わったもので言えば、錠前直し、メガネ直し、鏡磨きや、割れた陶器の修繕、ねず
    み取り、そろばんの修理、看板の文字書きまで、江戸の時代に生まれた数々の面白い
    サービスが街を賑わせていたのだね。担ぐカゴの形も、商品内容に合わせてユニーク
    だ。振売は、店舗を持たずに気軽に商売ができるから、瞬く間に江戸の街へと広がっ
    ていったそうだ。

岡部  かつての江戸の街の姿の中に、面白いヒントが隠されているかもしれないね。
    NTTデータベースの調べによれば、現在の日本における業種の数は大分類で64種、
    小分類で2000種だという。これらの業種が新しい技術によてどのような形に変化
    してゆくか。空間や場所に対する求め方の変化が、都市の未来を考える上で面白い視
    点になる。

竹中  都市の未来を考えると自動運転をはじめモビリティアズサービス(MaaS)
    など、コネクティッド・シティが示唆する新たな街の姿が、ふつふつと浮かび上がっ
    てくる。ヒトが動く時代から、自律的にモノが動く時代への移行とも言える。周囲の
    環境とモノとの関係性からダイナミックな空間を考えること、そして環境と呼応しな
    がら、インタラクティブなイヴェントが都市の賑わいを生み出してゆくに違いない。
    我々の住まう空間、集う空間、そして、都市のカタチは大きく変化する時代に突入す
    る。

 振売(「守貞謾稿 巻6」(喜田川守貞 著、1837年から1867年)より抜粋)
 Ⓒ国立国会図書館デジタルコレクション
 ※上記の画像、キャプションをクリックすると画像の出典元の国立国会図書館デジタルコレク
  ションのWebサイトへリンクします。

 振売(「守貞謾稿 巻6」(喜田川守貞 著、1837年から1867年)より抜粋)
 Ⓒ国立国会図書館デジタルコレクション
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 あらゆるモノやサービスがつながる実証都市「コネクティッド・シティ」
 ※上記の画像、キャプションをクリックすると画像の出典元のトヨタ自動車のWebサイトへリ
  ンクします。

 あらゆるモノやサービスがつながる実証都市「コネクティッド・シティ」
 ※上記の画像、キャプションをクリックすると画像の出典元のトヨタ自動車のWebサイトへリ
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竹中 司 氏/岡部 文 氏

アンズスタジオ /アットロボティクス 代表取締役 / 取締役