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コラム

日本人は妙で不思議

2020.02.27

ArchiFuture's Eye               ARX建築研究所 松家 克

日本人は妙で不思議な研究や発明、発見をする。ウィキペディアによれば、イグノーベル賞受
賞者は日本人とイギリス人が多いという。ノーベル賞とのダブル受賞の物理学者もいる。イギ
リス政府の首席科学顧問を務めたロバート・メイは、1995年「市民が真面目な科学研究を笑
いものにする恐れがある」と、イグノーベル賞の運営者に対し、イギリス人に今後は賞を贈ら
ないよう要請したことがあるという。この主張にイギリスの科学者の多くが反発し反論が起
こった。メイの要請にも関わらず1995年以降も選出されたイギリス人にはイグノベル賞が
贈られているという。

話は飛ぶ。世界には厳しい自然や環境が多々あるが、私たちが住む日本列島は温帯地域の小さ
な閉じられた島国で東西の島間が居住できる南北間より長い。この南北の居住地域は、
幅≒300km 長さ≒3,500kmと極端に細長く周囲は海である。このために台風や地震、火山、
暴風雨と波浪洪水津波などの災害と併せ春夏秋冬や猛暑と厳冬豪雪、梅雨、風、温
泉、日照などの自然現象と気候変化には地域差があり多様性がある。加えて、急峻な山と谷、
森林も深く水も豊かで特質の異なる川と大きな海があり、海岸線も複雑で長く変化に富み魚介
類の種類も多く、言葉や風習にも異なる特徴がある。
この環境下で古代からの先住民は、四季折々の変化や自然の猛威などに対応すべく生活スタイ
ルや道具、衣服、調理などの工夫が必然だったのではないか。誤解を恐れずに言えば、妙で不
思議な日本人の根幹をなす先住民は、この日本列島に渡って来た古代人との間で、生活交流や
諍いを重ねたのだろう。長い歴史を経て、元来の先住民の知恵と渡来人の冒険心や進取の精神
とが相俟って知恵と発見や工夫を身に付け、日本人の基礎的条件を創り上げていったのではな
いか。これらを基として恥の文化を持ちシャイで独自性に富み真面目さも併せ持つ今の日本人
が経験と歴史を踏まえ、今日までに脈々と形成されたのではないだろうか。このことが、先人
の伝統・遺産とともに今の日本人の妙で不思議で創造的な発明・発見の礎にあるのでは、と想
像している。
結果特徴的な遺伝子を持つとすれば、このDNAをベースにコンピュテーショナルな技術を駆
使し、併せ、SDGsを見据えた独自で新たな次世代への展開を期待したい。

ここで、日本人の発見や発明、伝統とレガシーを思い浮かぶままに恣意的に列挙してみると、
世界遺産の巨大古墳、高床式建築、浮世絵、伝統的な日本工芸、蒔絵、漆、百人一首、歌留多、
和歌/短歌・俳句、華道、茶道、茶室/数寄屋様式、盆栽、接ぎ木技術、「神宮の森」を持つ伊
勢神宮の遷宮制と持続可能な建築様式、ひらがな、1964年の東京オリンピック時に開発され
たピクトグラム、1994年デンソーにより開発されたQRコード、Sonyのウォークマン、ノー
ベル医学生理学賞のiPS細胞と物理学賞の中間子の理論的予言及び物理学賞の高輝度青色
LED半導体発明、加えてカミオカンデでの物理学賞のニュートリノ検出、オワンクラゲの研究
から端を発したノーベル化学賞、昨年にノーベル化学賞受賞のSDGs基盤を期待されるリチウ
ムイオン電池、加え他の数々のノーベル賞、インバウンドに人気のチームラボのデジタルアー
イグノーベル賞の世界に拡がったカラオケ冷/温も可能となった飲料自販機、米食文化か
ら生まれた電気炊飯器、テレビドラマになった即席カップ麺、職人が考えた折れ刃カッター、
初期の乾電池オセロゲートボール、イグノーベル賞のたまごっち/バウリンガルパチンコ、
ウォシュレットの展開VHS/ベータマックス100均ショップ世界で人気になっている和
食/握り寿司/回転寿司醤油みそ汁カツオ出汁旨味発見茶漬け、ぬか漬け、刺身、日本
ラーメン、牛丼/天丼/親子丼などの丼物、すき焼き、ウナギ蒲焼、アメリカで人気の日本酒、
一升瓶、中国が起源の尺貫法の展開和菓子、飴細工、鮒ずしを始めとする“なれ寿司”、“くさ
や”の干物、納豆乳酸菌飲料のヤクルト、何か不思議な“もんじゃ焼き”、マグロ永久養殖、伝
統文化の歌舞伎/能、落語、講談、浪曲、三味線・琴・尺八、日本刀、舞妓、芸者、着物、相
撲、柔道、空手、畳様式、下駄、手ぬぐい、風呂敷、裸でリレーションの銭湯、世界で人気の
けん玉、花札、任天堂のゲームソフト“スーパーマリオ”、今も人気の忍者、世界に冠たる漫画・
アニメ・コスプレ文化郷土行事でユネスコの無形文化遺産に指定された“なまはげ”、 国の重
要無形民俗文化財に指定されている“ねぶた”、インバウンドに人気のカプセルホテル、ラブホ、
安全で速い新幹線、工事中のリニア新幹線、世界で最も売れた日本初の立体商標のスーパーカ
ブ、“いっこく堂”の時間差腹話術、世界に類を見ない天然芝を移動させる方式の札幌ドーム、
2014年に機械遺産認定の中古部品を寄せ集め開発したマッサジチェアちらつきの無い電子
ミラー、災害時の緊急電力利用が考えられるハイブリット車、地震国ならではの免震・制振構
造、防寒に役立つ発熱繊維、温度コントロールカプセル内蔵繊維も日本人の発明だという。恣
意的なので誤りもあるかもしれないが、次々に楽しいほど浮かび、ざっと列記してもキリがな
いほど多い。
ノーベル賞からイグノーベル賞などのあらゆる分野で展開し日常の利用や目にしているものも
あり、日本人は妙で不思議だなあ~と時々感じる。視点を換えると独創的であり創造的。イグ
ノーベル賞も多くウイットにも富むのではとの感もある。
最近の訪日客は日本独自の文化など多くの情報をLINEやFacebook、WeChat、QQ、Twitter、
Instagram、YouTubeIngkeeなどで発信拡散しインバウンドの増加効果に繋がっていると
もいわれる。

推察の域を越えないが、CAD/BIMでも日本独自の展開をしているといえるかもしれない。携
帯電話が日本独自の進化を遂げ、優れているのにディファクトスタンダードにはなれなかった。
今ではガラパゴス携帯、ガラケーと呼ばれグローバル視点で見ると違和感があるのだろう。着
メロワンセグiモードedy(Euro/Dollar /Yen に次ぐ第四の基軸を目指し各々の頭文字で
構成)、多くのゲーム・アプリなどは日本独自の機能だという。残念ながら一部はディファク
トスタンダードにはなっていない。考えてみると何万年と継続し進化?してきた日本人の
DNAだが、ディファクトスタンダード化は苦手でガラバゴス化傾向が強いようである。
CAD/BIMの現状は、どうだろうか。想像の域を越えないが日本独自の展開をしているに違い
ない。日本の建築の多くは、和風という言葉があるように諸外国の様式も与しながら独自の展
開をしてきた。事務所建築や公共教育商業、住宅系でも然りである。この環境に30数年前、
突然CADが入り込んできた。ソフトの開発当初は日本独自の設計手法とのマッチングに考慮
が必要であり開発時の苦労もあったと想像される。
日本人は生活の中で太陽光の恩恵を強く感じ、併せ、地震国、台風、四季がある。建築ソフト
も日照や地震、自然環境、SDGs対応などで世界に類を見ないCAD/BIMの発展と展開をしてい
るといえる。今後を期待し注視したい。

松家 克 氏

ARX建築研究所 代表