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コラム

共有パラメータの標準化による意構設間、メーカー
との密な連携に向けて

2020.05.21

パラメトリック・ボイス                 日本設計 吉原和正

4月7日に発出された緊急事態宣言はGW明けからも延長され(一部地域で解除されてきていま
すが)、かれこれ在宅勤務を開始して1ヶ月以上が経過しました。以前はビデオ会議に接続する
のに時間を要して、スムーズに会議がスタートできたのは稀な状況でしたが、最近はビデオ会
議に周りも含めてだいぶ慣れて来て、この働き方が普通の状況になりつつあります。

コロナ禍をきっかけに、新しい働き方へ移行し、テレワークをベースにした業務へのシフトが
進み、必然的にクラウドでデータ共有しながら業務を進める流れに急速にシフトしそうな気配
も感じたりしています。

ただ、オンラインにはなったものの、さすがにFAXを利用する事はありませんが、一部の施主
やメーカーとはメールでのやりとりでこなさざるを得ない状況で、意図を伝達するのに相当苦
慮している実情もあったりします。中途半端なオンラインの仕組みでの100%テレワークの限
界をこの辺りに感じていたりします。

一方で、先進的な取り組みをしているメーカーでは、クラウド上で機器選定や技術計算のサー
ビス提供を始めていたり、BIMとの連携も実現しているところも出てきたりしていて、今まで
のようなBIMオブジェクトをダウンロードするだけの仕組みからかなり進化してきています。
ユーザーの立場からすると、ようやくBIM活用による大きな効果が出てくるのではないかと期
待が膨らんでいるところです。

ただ、残念なのは、現時点ではこれらの仕組みが、各メーカーごとに閉じた仕組みになってし
まっていて、共通化が図られていないことです。これは、ユーザー側にも同様の問題があり、
各社独自のパラメータを使って乱立してしまっている状況があります。このまま乱立していく
と、電子マネーのような煩雑な状況に陥ってしまわないかと危惧されます。

前回は「共有パラメータ」の重要性について触れたわけですが、この課題を国内共通の「共有
パラメータ」を利用していくことで打開できないかと思っていて、この「共有パラメータ」の
整備をRevit User  Group(RUG)を中心に進めていけないかと考えています。

先週末にRevit User Groupの総会をオンラインで開催させて頂き、200人以上の方が参加し
て下さいました。今年度から前任の大阪電気通信大学の飯島教授より引継ぎ、RUGの会長職
をお引き受けすることになったこともあり、今までは設備の領域での活動が中心だったものを、
意匠・構造・設備の分野間の連携に活動の幅を広げてその実現を目指していきたいと考えてい
ます。Revitの中では、設備はマイノリティーな立場で、国内ではまだまだ普及に至っていな
い状況にありますが、Revitの最大のミッシングリンクであるMEPのテコ入れと、意匠や構造
そして施工との連携強化を託されたものだと認識して、活動を推進していこうと思っていると
ころです。


BIMの委員会については、建築BIM推進会議や各部会、関係団体が活動しているので、その方
針に乗っ取って進めていくのは当然ですが、国内ではBIMソフトが乱立していることもあり、
どうしてもソフトネイテブな詳細な議論までは行き届かない状況にあると感じています。そ
こを、Revit User Groupが中心になって、Revitでまず具現化していけないかと考えていると
ころです。
 
 そして、これからは、特にこの5点、
 1.Revitによる意構設データ連携の具現化
 2.Revitでのファブ・メーカー連携推進による施工への展開
 3.Revitサンプルモデル活用による具体例の提示
 4.「共有パラメータ」の標準化
 5.次世代へのバトンタッチ
を主要テーマに掲げて活動していこうと思っています。
 
暫くは、オンラインでの活動に制限される状況にありますが、BIM360によりクラウド上で、
Revitのサンプルモデルを活用できる環境を有効利用することで、Revitのソフト上での振る舞
いを確認し具体に検討しながら、具現化していきたいと考えています。


「共有パラメータ」については、各部会で定義されたオブジェクト標準や、意・構・設で最低
限共通化を図るべきパラメータを、Revitで対応するために、RUGが中心になって標準化を進
めていきたいと考えています。
ここで標準化しようとしているのは、共通化すべき最低限の部分に限ったもので、今まで各社
独自で整備してきたものを否定するものではなく、うまく併用しながら緩やかに標準化を図っ
ていければと考えているところです。Revitへのデータ入力の手法も、考え方やユーザーイン
ターフェースの好みによって、幾つかのパターンが出てくるのは当然のことだと思っています
し、各社の製図基準に則って図面化のために独自にパラメータを設けることを否定するもので
はありません。あくまで、共通化を図るべき最低限の部分に限って標準化を進めようとしてい
るだけです。
目指すべきは、実務での自由度を阻害しない程度に、最低限の共有パラメータを定め、それを
スに推奨のテンプレトや推奨のジェネリックファミリの整備を進めていきベンダー
やメーカーと密な連携を図ることにあると考えていて、これにより、BIMの更なる活用シーン
の拡大を目指していきたいと思っています。
 
意構設間のデータ連携、メーカーとのデータ連携、ファブリケーターとのデータ連携、サード
パーティーとの密なデータ連携、これができないと本当の意味での、設計から施工へのデータ
連携その後のFMへのデータ連携を実現するのは難しいはずで、この実現は設計施工FM
とライフサイクルでデータが繋がるための必要条件ではないかと思っているところです。
 
各社に閉じたBIM活用をこのまま放置すると小粒な活用で止まり、大きな効果にはつながって
いかないのではないでしょうか。最低限共通化すべき非競争領域の部分については、国内標準
ルールで運用できるように、協調していくべきだと思います。
Revit User Groupでは、これを「共有パラメータ」の標準化から始めていこうと考えている
ところです。

吉原 和正 氏

日本設計 プロジェクト管理部 BIM室長