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コラム

COBieの勉強

2020.10.29

パラメトリック・ボイス               芝浦工業大学 志手一哉

BIMの情報を施設マネジメントシステムに引き継ぐテンプレートとしてCOBie(Construction
Operations Building Information Exchange)がある。英国では、「BS 1192-4:2014
Collaborative production of information Part 4: Fulfilling employer’s information
exchange requirements using COBie – Code of practice」として、公共建築プロジェクト
における引き渡しの情報として必須になっているという。そうしたこともあり、英国NBSはオ
ブジェクトの標準属性項目にCOBieの項目を採用している。

COBieのテンプレートはエクセルファイルで用意されており、20のシートで構成されている。
その内の1つはファイルの説明を記述するシートなので、残りの19のシートにプロジェクト
フェーズから維持管理フェーズに引き渡す情報を入力する。それらの関係を可視化すると下図
のようになる「Facilities」から「Floors」「Spaces」「Zones」に伸びるラインは空間に対
する情報で、各々のシートが「FloorNames」や「SpaceName」のデータでリンクされてい
「Type」「Component」「System」に伸びるラインは部品や機器に対する情報で
のシートが「TypeName」や「ComponentName」のデータでリンクされている。また、
「Spaces」と「Component」は「Space」のデータでリンクされ、「Type」と「Job」
「Spare」「Resource」は「TypeName」や「Name」でリンクされる。ここまでの9つの
シートが構造化されたリレーショナルデータベースの形式をとる。それらに対してある種で自
由にリンクを設定できるシートとして「Assembly」「Coordinates」「Documents」
「Impact」「Attributes」「Issues」「Connections」が用意されている。「Contact」は各
シートの情報を作成した人や組織をリスト化したマスターで「PickLists」は各シートで選択
する項目をリスト化したマスターである。

各シートはその情報を入力するフェーズが示唆されている。下の図では、薄緑色が基本設計
フェーズ、水色が実施設計フェーズ、橙色が維持管理フェーズ、灰色がフェーズを問わず入力
するシートとされている。また、赤線で囲ったシートの情報は、施工フェーズで追記される内
容を含んでいる。文字が斜体のシートはBIMオーサリングツールから出力できる情報で、
AutodeskのRevitを例にすれば「Facilities」「Floors」「Spaces」「Type」「Component」
「Systems」「Coordinates」「Attributes」はツールに入力したデータを直接利用し、
「Contact」「Zones」はアドオンプログラムのCOBie Extensionツールで入力したデータを
利用する。それらの中でオブジェクトの属性項目に設定するのは「Type」と「Component」
のシートを構成する項目である。全てのデータをBIMオーサリングツールで入力するのはかな
り大変だが、集計表とエクセルをリンクすれば入力作業を分担できそうである。

各シートは、保全マネジメントシステム(Computerized maintenance management
system:CMMS)で言うところの各種の台帳に相当する。それらの項目とCOBieの項目を共
通の語彙として、CMMSの台帳を自動で用意したり、CMMSからCOBieを通じてBIMのパラ
メータにアクセスしたりするような使い方を想定できる。また、「System」や「Zones」の
シートの記述を工夫することで機械設備と電気設備が複雑に絡み合うような施設管理で参照
したい情報をデジタル化できそうである。建物にもOSが必要と問われ始めている今だからこ
そ、COBieの構造、BIMやIFCとの連携を丁寧に分析してみる必要があるのではないかと考え
ている。

 COBieの各シート相互の関係

 COBieの各シート相互の関係

志手 一哉 氏

芝浦工業大学 建築学部  建築学科 教授