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コラム

デジタルメンテナンス

2021.01.14

パラメトリック・ボイス         SUDARE TECHNOLOGIES 丹野貴一郎

若い方はピンと来ない話かもしれませんが、ちょうど私が学生時代の1990年代後半からブー
ムが始まり2000年代にはインターネット文化の中心ともなったWEBテクノロジーにAdobe
Flashというものがあります。インターネットの普及とともにリッチなコンテンツが求められ
欠かせない技術となっていきました。
そのAdobe Flashが2020年12月31日をもってサポート終了となりました(これに伴いFlash
Playerはアンインストールが推奨されています)。
Flashが衰退する上で最も大きな影響を与えたのがiPhoneにおける不採用でした。公式では
理由としてセキュリティの脆弱性とされていますが、実際アップデートを繰り返す度に問題
が見つかるという残念な状況が続き、HTML5の台頭もあって今回のサポート終了となったよ
うです。

ICT技術では一時代を築いた技術であっても数年から十数年で終了という事がほとんどです。
そのため、維持・運用に手間やコストをかけることが必要とされており、ここを考えないと
せっかく良いものを作っても寿命が短くなってしまいます。決してAdobeがそこをさぼった
とは思いませんが、それでも更新していく事は難しいことなのだと思います。

BIMや様々な建築のテクノロジーでもせっかく開発したプログラムをメンテナンスしていか
ないと、数年後には使えない(もしくは使うために膨大な手間がかかる)ものになってしま
います。
おそらく皆さんの身近にも使いやすかったのにメンテナンスされずに消えていったツールが
あるのではないでしょうか。
ただしFlashのようにツールというものはメンテナンスをしていてもいずれ終わりがきます。
以前私の上司が退職時に「自分の会社人生を振り返ると、新しいツールを作っては自分でそ
のツールを否定してきたようなものだ」と言っていました。デジタルツール開発は、メンテ
ナンスを続けるということ、それを打ち消すような新しいツールを作り続けること、これら
相反する二つの事をやらないといけないのだと思います。

一方でデータに関してはメンテナンスをすれば使えるし、しなければ使えなくなるというも
のです。
自分自身もそうなので偉そうなことは言えませんが、新しいものを作っているときは目標が
あるので結構がんばれますが、一度完了したものをその後も使えるようにし続けるというの
は、なかなかモチベーションが上がらないものです。ただ、これだけデータを残す・集める
ことの重要性が出てきている中では、モチベーション云々などと言っていられない状況で
しょう。

実際担当していると、作業中は集中しているため先のことを考える余裕はないかもしれませ
んが、マネージャーを担う人はプロジェクト完了後にどう使えるかを考え、プロジェクト完
了後にデータを使えるように整理する時間を想定しておくべきです。
終われば良いというものは、本当にそれで終わりになってしまいます。

建築工事でも設計者や現場管理者は竣工後の維持管理まで考えています。(考えてくださ
い!)もちろん、実際に維持管理するのは異なる業者であったりしますが、だから考えなく
て良いとはなっていないはずです。

例えば今入力しているBIMデータですが、
10年後必要になった時に使えるデータになっていますか?
10年後使えるように更新することは想定していますか?

例えば今開発しているツールですが、
開発後の運用は誰がしますか?
開発者以外が見てもわかるデータになっていますか?

自戒の念をこめて2021年のテーマにしたいと思います。

ちなみに、サントリーのCraft BOSSでFlashを懐かしむページが公開されていますので、
興味がある方は見てみてください。
Flash back Memories

丹野 貴一郎 氏

SUDARE TECHNOLOGIES    代表取締役社長