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ユーザー事例紹介

すぐに実践で使えるArchicadが拡げる
BIMによるビジネスチャンス<アイテック>

2021.06.21

多種多様な建築図面の作成業務に取り組むアイテックは、業界内で、その確かな技術力が高く
評価されており、大手ゼネコンや組織設計事務所など、多くの顧客を持つ企業である。
同社は、社長の木村氏の主導で約10年前にGRAPHISOFTのArchicadを導入し、BIMモデルの
作成業務などを行ってきた。そして現在ではBIMの特性を活かしながら、顧客の要求を上回る
提案を続け、多くのプロジェクトで信頼と実績を積み重ねている。同社のBIMモデルの作成を
手掛けるようになった背景やそのきっかけとなったArchicadの導入過程、そしてBIMモデル
をとおした仕事の広がりや生産性向上への実務的なメリットは、どのようなものだろうか。
今回、代表取締役の木村雄一氏と、生産設計部 プロジェクトリーダーの佐々司郎氏にお話を
伺った。

BIMの時代を見据え、1本目のBIMソフトとしてArchicadを選定
1991年に設立され、今年で30周年を迎えたアイテック。東京都足立区に社屋を構え、ゼネコ
ンや設計事務所と協業し、施工図、実施設計、仮設計画図、そしてBIMモデル作成などを行っ
ている企業である。
代表取締役の木村雄一氏は「当社の特長は、施工図、実施設計、仮設計画図のプロがBIMソフ
トを扱っていることです。単にソフトが使えるオペレーターというわけではなく、お客様の意
向を汲みながらBIMで何をどこまでできるかという技術的な提案まで行えることが強みです」
と語る。

        アイテック株式会社 代表取締役 木村 雄一氏

        アイテック株式会社 代表取締役 木村 雄一氏


設立当初、施工図と仮設計画図の作成をメインに業務を開始したアイテックだが、約10年前に
事業拡大の足掛かりとしてBIMに関する業務を手掛け始めたという。そこで当時BIMソフトの
導入と事業化を強力に主導したのが木村氏である。
「BIM元年とされる2009年頃からBIMに関する情報を集め、ソフト導入の検討を始めました。
セミナーなどで情報収集を行う中で、図面の手描きがCADに置き換わったように、これから
BIMの時代が来ることを確信したのがきっかけです」と振り返る。
現在、アイテックでは複数のBIMソフトを導入しており、顧客の要求に沿ってソフトを使分け
ることも多いというが、木村氏が社内に初めてBIMソフトを導入するにあって、最初の1本目
に選んだのがGRAPHISOFT の「Archicad」であった。理由はいくつかあるが、特に「入門用
の “Archicad Magic” というマニュアルを少し読むだけで、直感的なインターフェイスと操作
で多くのことができるとわかり、導入を決めました。さらに最初から基本部材が揃っていて、
スタートしやすく感じたのも理由ですね。当社のような企業の場合、最初のハードルが低いこ
とが大切です」。
当時すでに複数のBIMソフトが世間では発売されていたが、他社と比べてArchicadのマニュア
ルはページ数も適量で、BIMの初心者でも扱いやすく、すぐに実践で使えるソフトであること
が選定のポイントだったと説明する。

 PCの建方工程においてArchicadを使用して作成したBIMモデル

 PCの建方工程においてArchicadを使用して作成したBIMモデル


実際にその言葉どおり同社ではArchicadの導入後すぐにPCの建方を行う都内の現場の仮設
計画で、建方の施工ステップモデルをBIMで行う機会があったため、即座に実践し成果を挙げ
られたという。
その後はプロジェクトで求められる機会が少しずつ増えていき、今では同社のBIMに関する技
術は高く評価され、「逆にBIMモデルの作成から入って2次元の仕事をいただく場合もありま
す。BIMのおかげでビジネスチャンスは広がっている面が多々あります」と、BIMに関する業
務が同社事業の柱の1つになったと評価する。

     Archicadによる立面図(左)と外壁の3Dモデル(右)

     Archicadによる立面図(左)と外壁の3Dモデル(右)


プロフェッショナルが語るArchicadのメリット
そしてアイテックの生産設計部 プロジェクトリーダーとして、施工現場での実施図や施工図
の取りまとめをしてきたのが佐々司郎氏だ。現場でのBIMの活用が当たり前になってきたこと
を肌で感じ、3年ほど前にArchicadを習得して扱ったという。
「会社の事業では施工図の作成が比較的多いですが、BIM作成を通して計画寄りの依頼を受け
るなど、さまざまなことにArchicadでチャレンジする機会が増えています。BIMモデルを作成
すると、現場での説得力が違いますね。とりわけ、特殊な形状の合意形成にはBIMはよりわか
りやすいため、向いています」と施工のプロの目線でBIMのメリットを語る。

        アイテック株式会社 生産設計部 プロジェクトリーダー 佐々 司郎氏

        アイテック株式会社 生産設計部 プロジェクトリーダー 佐々 司郎氏


また、ある大学のプロジェクトでは、外観の屋根のラインが有機的なカーブを描きながら変化
する計画であったため、鉄骨の組み方のモデルやパースをBIMで制作。現場事務所で大型の液
晶ディスプレイに映し出しながら合意形成をしたという例も語ってくれた。
「建築では構造や仕上げの部材数や種類が多いのでBIMモデルの作成は大変ですが、全般的に
普及が進み、それにつれて要求も高くなっていることを実感します」と佐々氏。それでも
Archicadを、ほぼデフォルトの設定のままで使い続け、不足は感じないという。

   佐々氏の手掛けた案件で作成した某学校の内観パース

   佐々氏の手掛けた案件で作成した某学校の内観パース


「仮設や施工計画の検討用ツールや、日影規制のチェックを行うアドオンを用途によっては使
うという形です。Archicadはインストールした段階でも、平面図を作成していると部材管理が
でき、立面図と断面図ができる。これだけ十分な機能が揃っているのは助かります」と使いや
すさを強調する。
また、佐々氏は「施工の現場にBIMが浸透する際、BIMソフトは使いやすさがなにより重視さ
れると思います。コストをかけてカスタマイズしなくても、パッと手軽にモデルを作成できる
Archicadは現場に携わる忙しい人たちにも向いていると思います」と予測を語った。

施工現場におけるBIMの活用をさらに加速へ
木村氏は「Archicadを導入した当時のイメージより現在の建築業界でBIM化は進んでいない
と感じています」と現状を分析している。「施工では、やはり2次元での作図が基本となりま
す。確認・検証のフローでは逆に3Dでなければ表現できないものもあり、現場の事前検討での
生産性を向上させるための手段としてやはりBIMは有効です。いきなりフルBIMのかたちでな
くても、BIMのメリットを少しずつ活かしながら施工現場でも導入を進めていくことで、BIM
導入への全体的な機運がさらに高まるのではないかとみています。もちろん、BIMのさまざま
なお悩みを当社はお請けできますし、BIMへの需要の高まりに応じて、私たちも施工でのBIM
活用への転換をさらに加速させたいと思っています」と力を込める。

   体育館屋根のリフトアップ

   体育館屋根のリフトアップ


また、実際にソフト導入に際して研修や教育にかかる手間も気になるところだが、木村氏は
「当社はOJTやセミナーなどを通して覚えてもらうスタイルです」と語る。アイテックでは基
本的に、建築に精通した技術者が触れるためという理由もあるが、「少しわからない場合でも
Archicadなら使う機能をあらかじめ伝えておけば、スタッフは建物のモデルをつくりながら
直感的に使いこなしていきます」という。
佐々氏も「厳しい条件の中にあっても、プロジェクトでBIMを使うことに楽しみを見出してい
る若いスタッフも多いようです。BIMを通して、楽しく仕事ができ、業界に若い人が少しずつ
でも増えるといいと願っています」と語る。

   Archicadによる配筋モデル

   Archicadによる配筋モデル


そして、木村氏は「BIMで効率よく現場を進めることで、建築の施工現場の生産性向上と長時
間労働の改善が見込める点は、やはり欠かせない視点です。従来の決定プロセスを変えていく
ことのお手伝いをし、建設現場のトータルメリットになるよう働きかけたい」と事業の展望を
語る。またこれから求められるFMなどにもBIMが役立つことを念頭に置き、次のように述べ
る。「これから既存の建物をどう生かすかという発想はいっそう重要になっていくでしょう。
Archicadでも維持管理のための仕組みをつくることができるので、紐付けていきたいですね」
と前向きだ。顧客とともに現場の課題解決にチャレンジし、経験を積み重ねてきたアイテック。
木村氏は「Archicadによって当社のBIMスキルもより向上させながら、お声掛けをいただけ
れば何でもできる、という実績をさらに築いていきたい」と力を込めて抱負を語る。

「Archicad」の詳しい情報は、こちらのWebサイトで。