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コラム

「2001年宇宙の旅」と人工知能=AI~シンギュラリティは近い

2015.11.10

ArchiFuture's Eye               ARX建築研究所 松家 克

キューブリック氏が監督、脚本の「2001年宇宙の旅」は、47年前の1968年に米国で初公開。
宇宙船ディスカバリー号の乗組員は、船長のデビッド・ボーマンら5名の人間と史上最高の人
工知能=AIを持つHAL9000型コンピュータ。この「HAL」は、人間に協調するようにプログ
ラム化されているが、木星にあるモノリス探査の任務は隠す。この矛盾する指示に耐えられず、
精神分裂的な異常をきたし乗務員の殺害を図る。・・この映画で人工知能=AIという概念を初
めて知ることとなった。この「AI」が、最近、富みにかしましい。

火付け役は、「人間未来研究所」の初代所長で、オックスフォード大学の理系哲学者のニック・
ボストロム博士。「AIは脅威か」の出版がきっかけだという。現在、想像以上に数多くのAIが
活躍をしている。事例の枚挙には切りが無いが、SONYが開発し1999年に発売された犬型ロボッ
ト「AIBO」は、コミュニケーションを通じて各々で成長し、行動に個性が出るように設計され
ていた。視覚、聴覚、触覚を持ち、当時としては高価にも拘らず発売直後に売り切れとなった。
このAIを生みだした足跡は、脈々と受け継がれ車の自動運転に係わる最先端技術開発のチーム
に継続しているという。最新の車は、総合的なコントロールや自己診断機能などをAIで補い、
既に、タクシーの街中での自動運転実験も始まっている。2000年には、HONDAから人間型自
律2足歩行ロボット「ASIMO」が発表され、その動作は、センサーや解析ソフトなどの発展と
ともに握手や人の追従、旋回、踊り、音声認識と発音なども披露し子供たちにも人気ロボット
となった。このAI技術は、災害対策ロボットに継承。

グローバルワイドでは、Google、Facebookなどに続き、TOYOTAは、ロボティクス・チャレ
ンジのプログラム・マネージャーとして著名なギル・プラット氏をアドバイザーに迎え、MIT
と米スタンフォード大学とでAIを共同開発中。阪大と京大の研究チームが開発した「ERICA」
も話題になっている。スムーズに対話が出来、人のように視線や体の動きが出来る美人ロボッ
ト。NTTデータ、NTT、ヴイストン3社は、クラウド型マルチデバイスインタラクションサー
ビスの共同実験を開始。この目的は、ロボットとの対話とセンサーによって得られたユーザー
のデータを分析し、状況をロボットが判断し、声がけ、天候や状況により散歩を促し目的地を
紹介、家人の送迎、外出中の掃除、関心のあるイベント案内などの役割を果たすという。これ
らのインタラクションで得られた情報をもとに更に総合判断し、個人の可能性の拡大を図る。
プロの棋士との勝負や東大合格、作家にチャレンジしているAIもある。但し、感情や実体験を
踏まえた問題が多い中学校入試では、現在のところ突破は困難であり、アート的な感覚になる
と更に対応が難しいらしい。今年の「CEATEC」情報では、AI、ICTやIoT機能に五感機能を持
たせる研究が更に進み、味覚、嗅覚が加わり、視覚、聴覚、触覚の五感機能が可能となりつつ
あり、スマホで呼気からガンの発見や国産か外国産牛かの区別も可能という。最新事例では、
日立とメニコンで工場のボスを人と共存し共に考えるAIとし、効率を挙げているという。

それでは、建築界ではどうなのだろうか。ロボット化する建築、住宅、生活介護支援は、はた
して人間生活にどのような変化を促していくのだろうか。持続可能な社会、環境問題が叫ばれ
て久しいが、このAIロボットとの間にリレーションはあり得るのか。課題は多く尽きない。
今年のArchi Future 2015でも建築ロボットを取り上げた。ロボットでの施工、製作などの内
外の最先端事例であった。

米国の発明家、カーツワイル氏が唱えた収穫加速の法則は、生命進化のプロセスにも適用され、
DNAの成立、生殖という発明、発明を作る発明としての人間の誕生などを一元的に捉え、この
プロセスの継続により人間の脳の能力を数値化した。それによると早ければ2020年代前半、
遅くとも2045年ぐらいにその数値をコンピュータの能力が追い越すと想定されるらしい、そこ
で、カーツワイル氏は「シンギュラリティ(技術的特異点)は近い」と結論付けた(ウィキペ
ディア)という。2022年に北京での冬季オリンピック・パラリンピック開催が、IOC総会で決
定された。2018年平昌(韓国)、2020年東京(日本)、2022年北京(中国)とアジア開催が
続くことになった。冬季は、2026年に札幌市が立候補する。アジア、アジア、アジアとなると
札幌市に決まるのが難しいのではとも言われているようだ。2026年に札幌で冬季オリンピック
が開かれるとすると人工知能はどのように展開しているのだろうか、シンギュラリティは起こ
るのか、興味は尽きない。



 

松家 克 氏

ARX建築研究所 代表