Magazine(マガジン)

コラム

五百羅漢&ゲーリー&BIMの源流

2016.02.23

ArchiFuture's Eye               ARX建築研究所 松家 克

ここ短期間に、展覧会4,5か所とイベントに出かけた。森美術館での村上隆氏のカタールの
ドーハでお披露目をした五百羅漢図の迫力に仰天。この製作に多くの学生が関わり、デジタル
手法が製作プロセスにとり入れられ、工房では何台ものPCが稼働していることと、村上氏の微
に入り細に穿った多くのスケッチの指示に深い興味が湧き、思わず、限定豆本を購入した。
この後の何日間かは、集中的にギャラリーと五美大卒業展が開催されている新国立美術館など
をまわり、現代アートを見た。アートワークも今は動きの時である。
このさなか、リファイニング建築で活躍されている青木茂氏のセミナーに参加。そのご活躍は、
今年の1月31日(日)TBSの「夢の扉+(プラス)」で放送されたが、緻密な対応と大変な労力
に頭が下がる。この分野はFMも見据えたデジタルによる3次元対応が、必須となるとの念を強
くした。
そして次は、取材でお訪ねしたBIM対応CADの初心者向け講習会である。自らも講習を受ける
破目になり、気分を新たに新バージョンのCADソフトでの3Dの入力に参加した。実にサクサク
と気持ちの良い動きと入力状況を体験することが出来、若い人は大変だなあ~と、考えていた
ことが、これなら、あまりストレスなくBIM対応スキルに移行出来るか、と納得した。

次は、大先輩の椎名政夫氏から「君、フランク・ゲーリー展に行ったか、凄いぞ、ショックを
受けた。」との報をお聞きし、予定より早く「21_21 DESIGN SIGHT」を覘くことにした。
20数年前にスイスとドイツの国境沿いの町、ドイツのヴァイル・アム・ラインにあるヴィトラ
社を訪ね、工場のラインの案内を受けた。ここに併設されているのが、ゲーリーの設計による
「ヴィトラ・デザイン・ミュージアム」である。休館中であったが、ご厚意で内部を見ること
が出来、この展示空間と建築に感動を覚えた記憶が今でも残っている。
「Facebook本社」「ルイ・ヴィトン財団」「ビルバオ・グッゲンハイム美術館」などで著名
なゲーリー展である。見逃すわけにはいかなかった。圧倒されるような模型群は、子供たちや
若い人には、大人気の様子。ゲーリーの建築は、曲線構成が多く見られる。このような建築の
設計は、どのように進められているのかとの興味に尽きないが、早くから3次元CADによる設
計方法が取り入れられていることに驚かされた。VTRによるゲーリーの設計手法の解説は、興
味深く、そのデジタル駆使の深度の深さに感嘆。マスターモデルを導く多くの模型とデジタル
による設計プロセスには、改めて目をみはる思いであった。

2002年に設立されているゲーリー・テクノロジーズは、提携したダッソ-・システムズとと
もに3次元CADでの新プロセスにチャレンジしていることが読み取れる。コロンビア大学建築
大学院教授も歴任されており、「SHoP」の主要メンバーが、コロンビア大学の卒業生である
ことも頷ける。BIMの源流は、ここにもあったのかもしれない。手元の本では、引退までのカ
ウントダウンを始めたとゲーリー自身が語られているが、最終章で、影響を受けたコルビジェ
の「ロンシャンの礼拝堂」と「ラ・トゥーレット修道院」、そして、絵画と彫刻のことや
ゲーリー・プランナーズの今後のことなどが語られ、建築家としての存在に畏怖の念を持つと
ともに、アートへの造詣の深さにも驚かされる。併せ、現在進行中のアップル新社屋の設計者、
「フォスター+パートナーズ展」も見逃せない一つであった。
最後に、2月16日に開催された建築学会での「BIMの日」の提案とBIMシンポジウムに参加し
た。参加者が多く、お断りをする状況であったという。まさに、BIMが「マニアックからリア
リティー」に大きく動いた感を強くした。

 五百羅漢図の限定豆本

 五百羅漢図の限定豆本


 フランク・ゲーリー展会場風景1

 フランク・ゲーリー展会場風景1


 フランク・ゲーリー展会場風景2

 フランク・ゲーリー展会場風景2

松家 克 氏

ARX建築研究所 代表