Magazine(マガジン)

コラム

建築BIMの時代27 思い込みとBIM

2024.05.07

ArchiFuture's Eye                 大成建設 猪里孝司

ジェイムズ・P・ホーガンというSF作家をご存知だろうか私は三十数年前に大学の研究室の
先輩に教えてもらい処女作の「星を継ぐもの」を読んだ。SFなのにある種の現実感があるプ
ロットと物語に魅了されすぐにファンになったほぼ全作品を読んでいるが、最初に読んだ
「星を継ぐもの」が最も面白いと思っている。今、手元にあるものは創元推理文庫の1986年
2月7日発行27版(いまさらであるが東京創元社は刷ではなく版というようである)で、会社
に入って、もう再読しようと購入したものである。どこまで版を重ねたのかを知りたくて、
先日あらたに購入したものは創元SF文庫の新版 2023年7月7日発行の初版である。旧版の最
後は2022年5月27日発行104版とある。いまだにそれなりに売れていることが分かる。
2010年に没したこともあり最近はあまり気に留めていなかたが今年1月の日本経済新聞
「半歩遅れの読書術」欄で「星を継ぐもの」とジェイムズ・P・ホーガンが紹介されており、
懐かしい記憶が蘇った同時にH・G・ウルズやアーサー・C・クラークJ・G・バラード
など英国出身のSF作家の中で『なぜか日本でだけ突出した人気を誇るのがジェイムズ・P・
ガンという記述に衝撃を受けたきり世界中で人気を博していると思い込んでいた。
ここにも「日本だけのこと」があった。皆さんのご感想をお聞きできればと思っている。


「日本だけのこと」でもう一つ。最近「テックラッシュ戦記」(中央公論新社 2024年
1月10日初版発行)を読んだ。著者は、経済産業省のキャリア官僚からアマゾンジャパンに転
職し、アマゾンが日本で活動するための障壁を下げる活動(本書では“ロビイング”と総称)を
行ってきたその経験からこれからの日本の成長(再興)のために国や企業が何をすべきか、
何を変えるべきかについて“考える一つの材料を提供する”ことを目的として書かれている。示
唆に富む話が数多くあった。提言を実現していくプロセスや交渉手法、論旨の組立や論点の絞
り込みと明確化はものごとを進めていく上で大変参考になる。またアマゾンの「リーダーシッ
プ・プリンシプル」
は企業活動の意義と従業員のモチベーションを上げるという観点から大変
参考になった。これはインターネット上で公開されているので誰でも読むことが出来る。こん
な企業で働きたいと思わせるものである。ルール形成において、オープンで公正な議論ができ
る場、環境があれば職人技のような“ロビイング”も必要なくなり、政策立案者と市民双方にメ
リットがあるという提言はもっともだと思う。
 
前置きが長くなったが、本題はここから。前職での経験を振り返り、国内の伝統的な企業とグ
ローバルなテック企業とのロビイングを比較し、”このような伝統的な企業側には、そもそも
ルというものは変えられるものであるという発想自体がなかたりする”(P31)という記述
があった正に私自身だルールを変えるのは無理だと勝手に思い込んでいた“ルールは変え
るためにある”という恩師の言葉をすかり忘れてしまていた社会にとて変えた方がいい
ことは変えることが出来るということを心に留めた。変えた方がいいことが変わらない、変
えられないということは何かが足りないということの表れということだと理解しようと思う。
BIMの活用と現行の法規や商習慣が整合しないことがある。日々、そのようなルールを変えよ
うと格闘している方々が多くいらっしゃるルールを変えることで社会に貢献したいと思う。

猪里 孝司 氏

大成建設 設計本部 設計企画部長