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コラム

建築現場の一元化を妄想する

2016.03.24

ArchiFuture's Eye               ARX建築研究所 松家 克

日経産業新聞によれば、ロサンジェルスにあるパナソニックの子会社、パナソニックアビオニ
クス社は、通信機能を備えた1千機以上の飛行機の娯楽システムを一元的に24時間集中管理し
ているという。各航空機のシステムに異常はないかなども併せ管理している。これに伴い、蓄
積されたデータでシステムの利用状況や次のステージへの分析などにも活かしていると考えら
れる。
日本では、新幹線の運転状況や機器のデータが集中一元管理されている。現場の運転士、車掌
は当然のことながら運転の全ての責任をその電車で負っている。しかし、全運行状況の把握と
確認、緊急時の全列車のコントロールは、指令室で行われている。船舶も航行データの集中一
元化管理の方向にあるという。太平洋やペルシャ湾での航行状況を東京にいて把握し、省力化
や次の運行に役立てるという。
強い農業を目指すクボタは、独自で農業関連のモノをネットにつなげるシステム、IoTクラウ
ドサービス「クボタスマートアグリシステム」を構築し、コメの乾燥機やトラクター、コンバ
インなどと接続できる環境を整備しつつある。データ通信方式は、社外にも公開され、クラウ
ドに保存されたデータは、農業作業に携わる人が、スマホやタブレットで確認できるという。
農薬や肥料の散布、自動運転トラクター、ドローンでの土壌診断、田んぼごとの履歴管理、財
務、会計、食味などを遠隔管理化。建築現場に似た状況も垣間見える。
 
近い将来の建築現場は、上記を踏まえ集中一元化管理が可能なのではないかとの夢を見た。一
部では、既に似たようなことが実行されているとも考えられるが、妄想か、正夢か、周辺情報
から辿ってみたい。
高齢化と人手不足、初心者対策に悩む建設現場では、一元管理対応の可能性を高くするハード
やソフト関連の進歩が近年著しい。360度を映し出すカメラや人認知センサー、通常よりも短
時間の内に3Dレーザースキャナーで3Dモデル化できる「インドアマッピング&ナビゲーショ
ンプラットフォーム」と名付けられたシステムの導入例。歩行速度程度の早さで高精度で3D
データ化ができるという。当然、データは、遠隔でもオンラインで管理可能である。最近話題
になっているヘルメットに取り付けられたウェアラブルカメラでの現場の状況把握、ディスプ
レー上にAR技術で表した作業内容指示などの利用を図るヘッドマウントディスプレーウェア
ブルの眼鏡や時計での作業内容の把握、作業員が身に着けた衣類型のウェラブルセンサーでの
作業員の安全と健康管理、センサーで現地の気温、風などのデータ収集と緊急時の臨機応変の
対応。現場の現実と完成予想形状などの仮想映像を同時に見られるVRやドローンでのデータ
収集。
これらのすべては、オンラインで接続が可能であり、多くの現場の一元管理が可能となると考
えられる。資材の流通や重機の効率的な利用、作業員の配属配員、緊急時の対応、効率化に伴
うコスト削減などが可能となるのではないだろうか。スマホやタブレットで現場作業員も情報
を共有できる。当然のごとくBIMデータのコンテンツや工場とのやりとりも可能になると考え
られ、かつ、集中一元化管理も見えてくる。反面、情報の漏洩やプログラムのコピーなどリス
ク対策と新たな課題も見え隠れする。当然のことだが、現場で集められたデータは、保守とメ
ンテナンスにもつながり、継続的な業務も確保にも役立つと考えられる。
多くの現場が、一元管理された場合の安全や防災対策、老齢化や人手不足と初心者対策などに
有効で効率的なのかどうかの検証とともに、夢の正夢化はあるのか、デジタル故に可能性が高
くなったといえるが、まず手始めに新国立競技場の1現場での最新技術を網羅した集中一元化
管理を夢見、今後の夢の展開がどうなるのか、また更なる夢を見たい。

(参考資料:日経産業新聞)

松家 克 氏

ARX建築研究所 代表