新たな技術の正しい発展
2025.05.13
パラメトリック・ボイス SUDARE TECHNOLOGIES 丹野貴一郎
ベトナムで4月30日はベトナム戦争が終結した南部解放記念日という祝日です。
50年前の1975年4月30日にサイゴン(現在のホーチミン市)が陥落したことで、1955年から
続いた内戦が終結し、ベトナムは共産主義国家として統一されました。
今年は50周年と言うことで大々的に行事やイベントが行われ、私がホーチミンに滞在した
4月20日の週でもリハーサルによる混雑や交通規制により1:00までホテルに帰れないという事
態もおきました。
ベトナム戦争の詳細については調べていただければと思いますが、北ベトナム支持の人をのぞ
く多くの南ベトナムの人にとっては戦争に敗れサイゴンを失ったという日でもあります。
日本でも今年が昭和100年ということで、昭和を懐かしむようなイベントや番組が多くありま
すが、昭和は約62年間と長いこともあり、第二次世界大戦を含む長い年月は決して良い思い
出だけではないでしょう。
50年前なので、当社が一緒に仕事をしているホーチミンの50代後半の方は複雑な感情を持って
いましたが、若い人々にとっては大きなお祭り的な感覚で楽しんでいるようです。
ホーチミン中心部にはフランス統治時代に建設されたコロニアル様式の建築が残っておりま
す(ホテルマジェスティックの様に現在でも宿泊できるホテルもありますので、旅行で行かれ
る方は泊ってみると良いです)。
普段からライトアップされていたりもするのですが、今回の50周年イベントでコロニアル建築
のひとつである人民委員会庁舎でプロジェクションマッピングが行われたようです。
人民委員会庁舎
プロジェクションマッピングの準備
このような歴史的な建物でのプロジェクションマッピングはイベントとしても技術的にも珍し
さはありませんが、実際行うと訴求効果も大きく、投影されるコンテンツ次第で十分楽しめる
という意味では、初期の先端性から正しく発展を遂げ定着した感じがします。
先端技術が定着するかどうかは、そもそも社会の求めるものに合っているかと正しい発展を遂
げるかの両方の要因が大事な気がします。
新たな技術の開発や推進をする際にまずは社会に求められている(もしくは求められるであろ
う)ことを基本として、社会の適応状況に合わせて発展・普及を目指す事が必要だと思います。
この時に向かう社会が自分が所属する部署や会社のみになると、限定的な発展しかしなくなっ
てしまうのではないでしょうか。
ただし、これはある程度は必要な過程だとも思います。最初から広い社会をみてしまうと目的
が発散してしまうこともあるため、まずは近しい社会からスタートすることは決して間違いで
はないでしょう。
そういった理由もあり、新たな技術の黎明期には様々な独自サービスが創出された上に新旧織
り交ぜられた混沌が生まれます。おそらく次の発展期や成長期に広く社会をみることができる
かどうかが定着期につながるかどうかの分かれ道になると思います。
BIMは既に黎明期を過ぎていますが、私の感覚として定着期に入ったとは思えません。
正しく発展期や成長期を過ごせているでしょうか?
向き合う社会が狭い組織になっていませんか?
自戒の念をこめて。
都市の発展期の混沌はある意味で魅力的でもあります