AIを活用した「構造~施工~積算~協力会社
BIMデータ連携」の実現<U’sFactory>
2025.07.08
創業以来10数年にわたり、3DCADを活用したITソリューションとDX化を促進する
U’sFactory(ユーズファクトリ)。
BIM設計支援ツール「BI for AC」は現場の課題に向き合ってアップデートを続け、建設プロ
セス全体の効率化と高精度化を実現している。
建設業界では長年にわたって、積算や構造図、施工図作成において手作業に頼る部分が多いこ
とが当たり前とされ、効率性や情報共有の点で課題を抱えている。
「BI for AC」ではこの課題にも着目し、「構造図自動作図」機能を新たに実装。さらなる効
率化と合理化を進めた。
同社代表取締役社長の上嶋泰史氏に、この機能を備えた背景と特徴、狙いについて詳しく聞い
た。
「積算だけ」に使われていたリソースを見直すべき
「そろそろ、積算や構造図作図、施工図作図などに関わる外注費をどのように使うべきかを見
直す時期に来ています」。そう語る同社代表の上嶋泰史氏は、これまでの積算のあり方に疑問
を投げかける。従来の積算業務では、専門の積算事務所に依頼し、得られる成果は計算式に基
づく数字と表形式のデータだけであった。積算ソフト上における3Dモデルでの表現は、「コ
ンクリートと簡易鉄骨の表示だけで詳細表現や3Dモデル上での編集が出来ない」と上嶋氏は
指摘する。「型枠や鉄筋」において、3D表現は無く、「掘削や埋戻し」の表示については、
2Dの図面で簡易的に表現する。そして、「拾えない項目は結局“手拾いし、個別入力を行うこ
と”になり、取って代わるものがない状況でした」と上嶋氏は語る。積算にかける膨大な人手
と時間、コストはあくまで積算のためであり、その情報が二次活用されることはほとんどない。
株式会社U’sFactory 代表取締役社長 上嶋 泰史 氏
そうした従来の方法に対し、ARCHICADを基盤とした設計支援ツール「BI for AC」は積算費
用と同等あるいはそれ以下のコストで、より精度の高い情報が手に入り、しかも二次利用や関
係者間での情報共有を可能にする。計算式に加え、型枠の計算一覧表、鉄筋の加工帳、3Dで
展開できる各種図面、工程別の数量明細、さらには仮設計画まで自動生成。新たに、「構造図
自動作図」の機能を実装したことで、詳細図や施工図を手で描かなくてもよいプロセスを実現
するだけでなく、元の図面との比較を合理化したことで、入力ミスを徹底に防止した。「手拾
いに頼っていた部分も3Dで効率的に処理できるようになり、3Dで検討した方が早く確実に
なっています」と上嶋氏は強調する。
構造図自動作図機能の画面
「BI for AC」はAIを活用することで、これまで時間のかかっていた作業を劇的に効率化する。
例えば、部材登録作業においては、符号と呼ばれる「G1の7階の1マス」などの1つ枠の指定
部材について、従来は6分ほどかかっていた読み取り作業がAIによって40秒に短縮。10ページ
分では、53分の削減につながる。「部材を登録するだけでも3日半の時間の削減につながり、
さらに自動配置で1日半の削減となるので、合計で約5日の工数削減が見込まれます」と上嶋氏
は語る。
AI Structure 部材定義範囲の自動判定画面
AI Structure 部材定義の画像解析画面
また「BI for AC」では、鉄筋専門工事会社が実際の加工条件に則った配筋の3Dモデルが自動
的に生成され、複雑な鉄筋の納まりもボタン一つで最終形態が確認できる。その際、例えば隣
り合う梁せいの違う部分で下端鉄筋の柱への端部定着を考慮した細かい補正は、従来の積算ソ
フトでは手作業で行っていたが、「BI for AC」ではその必要がない。「想像以上に、積算ソ
フトでは膨大な手作業がある」と上嶋氏はいう。特に注目されるのは、「雑鉄筋」と呼ばれる
配筋も同様に自動生成される点だ。ひび割れ補強筋や段差スラブの鉄筋、壁の差し筋や土間の
差し筋などの手拾い作業が自動化されることで、大幅な時間短縮と精度の向上が実現する。
上嶋氏は「こうした処理は、すでに人間の力を超えています。手拾いは3Dで行う方が早いし、
積算にしか使わないデータ入力にコストをかけているのは本当にもったいない」と断言する。
隣り合う梁せいの修正
実数量と積算数量がリアルタイムで合致する意義
鉄筋専門工事会社が必要とする加工帳の作成も、「BI for AC」では自動化されている。「鉄
筋を切断し、圧接して縮む分も考慮して余長を出しながら納品を依頼する加工組立図の作成も
自動化しています」と上嶋氏は説明する。「これまでの積算では、図面上で1本として描かれ
ている鉄筋に対して余分をとることがされていませんでした。積算協会が定める拾い方では拾
いきれない部分を、実際に使用される鉄筋の数量として算出できるので、無駄をなくし、関係
者間の認識齟齬を防ぐことができます」。
AI Structureからの部材画像データを一括配置した3Dモデル画面
この精度の高い数量は、専門工事会社が必要とする部位別・階別の計算書といわれる、径ごと
の本数・重量といった帳票としても出力される。「積算ではすべての集合体が大事と思われて
いますが、大事なのは帳票といわれる部分であり、いわば確認を簡単にしている。工種別、集
計区分別、場所別、部屋別などさまざまな種類があり、同じ積算でもアウトプットがすべて異
なる」と上嶋氏は語る。これにより実数精算の根拠としても活用でき、公正な取引が促進され
る。
そして、実際の工事では、コンクリート、型枠、鉄筋・鉄骨は、密接に連携している。これま
ではそれぞれが別々に考えられ、コンクリートや鉄骨の施工図を先に作成して承認を得るプロ
セスがとられていたが、「BI for AC」では、これらすべてが連携した3Dモデルを生成し、構
造図、コンクリート施工図、型枠の展開図、鉄筋の加工組立図、鉄骨製作図などを自動的に作
成する。打放しコンクリートでは、意匠的に重要な型枠の目地の割り付けやセパレーターの位
置も適切に定まる。
特に、「一括加工用型枠展開図作成」は注目の機能だ。従来の型枠積算では、出隅部で型枠を
留めるための「耳」と呼ばれる桟木の部分など、細かな要素は積算対象外となるため、実数量
と積算数量の間に差異が生じることがほとんどであった。しかも型枠の面積は、0.5㎡を境に
した減算の積算ルールがある。「BI for AC」は、型枠大工が頭の中で考えていた細部の条件
までかなうリアルな3Dモデルを生成し、より詳細な加工情報を提供する。
「これまでは積算と製作のためにコンクリート施工図の承認を得る必要があったのですが、割
り付けなどで図面の変更があると修正すべき関連個所が多く、途方もない作業が発生していま
した。『BI forAC』では1個所の修正が3Dモデル全体に自動的に反映されるため、誰でも整合
性のある施工図を作成・確認できるようになりますし、手戻りなく常に最新の情報を共有でき
ます」と上嶋氏は語る。
現場のリアルな需要にこたえ続けて支持が広がる
「BI for AC」が他のソフトウェアと一線を画すのは、その開発プロセスである。「この12年
間で、80社を超える何百人もの実務担当者からの要望を受け、8,000件近くもの項目追加や修
正を重ねてきました」と上嶋氏は語る。さまざまな立場で使う人の声に対応してきたことによ
り、現場のリアルなニーズを反映した、使い勝手の良いシステムが構築されているのである。
建設業界は、残業時間の上限規制や熱中症対策など、働き方改革の波に直面している。こうし
た状況下で「一切の手戻りがなく、ミスなく段取りしないと工程の遅延は避けられない」と
上嶋氏は危機感を募らせる。そして、この点でも有効な「BI for AC」は「単に積算のためだ
けでなく、すべての工程が連携し、正確な3Dモデルからさまざまな帳票や図面を自動で生成
する点が真骨頂」と強調する。「最近の傾向として、鉄筋型枠専門工事会社も『BI for AC』
を使うようになってきました。また内装工事業者やデッキ関連メーカーなど、ゼネコンの枠を
超えて協力業者にも広がっています」と上嶋氏は語る。「BI for AC」ではiPadでの3Dモデル
確認など、見える化した情報共有を促進することでも、建設現場の生産性向上に大きく貢献し
ている。協力会社や専門工事会社が自発的にBIMを活用し、正確な情報を共有しながら協働す
る時代は、すでに到来している。
「BI For AC」の詳しい情報は、こちらのWebサイトで。