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コラム

IFCがマイブーム

2022.04.07

パラメトリック・ボイス               芝浦工業大学 志手一哉

「今さら?」、と言われそうだが、IFCがマイブームである。初めてIFCに触れたのは、前職
で携わった約10年前のプロジェクトである。その時は、CADWe'll TfasのデータをIFCに出力
してRevitに読み込み、COBie ToolkitでCOBieデータを出力しようとしていた。当時は、IFC、
COBieOmniClassなどについてほとんど無知だたし参考になる日本語の資料も見つけら
れず、関わったメンバーで四苦八苦したことを覚えている。私の知識の乏しさもあって、
CADWe'll Tfasに読み込んだStem仕様の属性情報をIFC経由でRevitに上手く読み込めず、
IFC File Analyzerなどを利用して確認しても「出力できていそうだけど読み込めない」理由
をいまひとつ理解できなか結局、IFCを読み込んで意匠と統合したRevitからCOBieデー
タを出力し、作成したCOBieのスプレッドシートで該当機器を探し、csv出力したStemの属
性情報をコピペするというアナログ寄りな方法で対処した。素晴らしい知識と頭脳のメン
バーと共に知恵を絞り、「デジタル職人」的に乗り切ったこのプロジェクトで「オープン標
準」の重要性を感じ取ることができたのだが、その一方で、IFCによるデータ変換に過度な期
待をできない印象を抱いた。その誤解は、IFCをデータ交換ファイルとして見ていたからだと
ようやく気付いたのが、遅ればせながら今日この頃である。

2020年初頭以来のコロナ禍で、世界中のセミナーをオンラインやオンデマンドで視聴できる
ようになった。それ以前は旅費や時間の確保言語などのハードルが棒高跳びのバー並みに
高く、BIMの国際動向を知ることが容易でなかったが、オンライン/オンデマンドというポー
ルが一般化したおかげで高いバーを軽と飛び越えられるようになこうした環境のお
かげで視聴する機会に恵まれた「buildingSMART International Virtual Summit」で、IFC
のビーアが目に飛び込んできた。私の不勉強を晒すようでお恥ずかしいがBIMオーサリン
グツールから出力したIFCのプロパティを、別のBIMオーサリングツールに読み込まずに、
IFCファイルのままで容易に確認できる環境にいまごろ衝撃を受けたわけである。さっそく、
フリーソフトのIFCビューアをいくつか入手し、色々と試してみてお気に入りの1本に辿り着
いたので、『Revit IFC マニュアル』も参考にしつつ、IFC4についていろいろと試している
次第である。

RevitからIFC4への出力をいじっていると「ああ、そういうことだったのか」とわかったこと
も多い。というのも、建物要素に求める性能を記述するパラメータとしてIFC4のProperty
Setsが有用分類体系としてUniclass2015のEFテーブルとSsテーブルの番号を付与するのが
良いと思いつつも、それらのパラメータをIFC4に出力する方法がよくわからずにいたからで
ある。わかったことを備忘録代わりに書いておくが、なにせIFCの初学者なので、「そりゃ、
違うよ」というつこみはやさしく教えていただけるとありがたい(というかこのコラムを
誰でもブラッシュアップできるとよい)。①buildingSMARTで定義されている、IFCの建物要
素ごとに属性情報がセッティングされたProperty SetsのPropertyは、IFCのドキュメント
記載されている通りの名称とデータ型で共有パラメータを設定すれば値の空のパラメータと
Revitが出力をサポートしていないいくつかのパラメータを除いてIFCのProperty Setsに出力
されるこれらはBIMオサリングツルでの入出力が保証されている(はず)②Revitから
IFC4の仕様でIFCファイルを出力するには、IFC エクスポーターで、IFC4に対応した
MVD(「IFC4 Reference view」「IFC4 Design Transfer View」などの 設定)を選択する。
③IFCのProperty Setsのプロパティ以外に追加した共有パラメータ(Uniclass2015のEFやSs
など)は、集計表に表示させ、集計表をプロパティセットとして出力する設定をIFCエクス
ポーターで行う。ただし、これらをBIMオーサリングツールですんなりと読み込めるとは限ら
ない。

このような設定で出力したIFCファイルを、IFCビューアで読み込んだ画像が下記である。意
図した通りにプロパティと値が出力できていると年甲斐もなく嬉しくなるもちろん意図し
たProperty Setsが出力されない、IFCの建物要素の分類が少ないなどの問題はある。しかし、
異なるBIMオーサリングツールで構築したBIMデータでも、共通化した属性情報を同じ名称と
データ型で出力したIFCファイルならば、それらをIFCビューアで重ね合わせてプロパティと
その値を確認しやすい。つまり、IFCファイルで建物情報を共有すれば良いという考え方に辿
り着く。先日(2022年3月24日)開催された第8回建築BIM推進会議の「部会5 BIMの情報共
有基盤の整備検討部会(buildingSMART Japan)」の報告に「IFC用CDEの実証」という似
た概念の説明があった。IFCファイルはオープンフォーマットなので、そのデータを利用した
ツール開発やイノベーション、さらにはEIRで要求するデータの具体像も想像できる。IFCが
マイブームになっている理由は、IFCはデータ交換ではなく、そのまま利用すれば良いのでは
ないかと、10年近くの歳月を経てようやく気付いたからである。


志手 一哉 氏

芝浦工業大学 建築学部  建築学科 教授