広工大はデジファブで「つくる」を加速します
2025.06.24
今年度、広工大にものづくり拠点としてHiroshima Making Hub(通称:M-Hub)が整備され
ました。他の工業大学と同じように、これまで鉄の加工を行う工作センターや木工室などが
キャンパス内に点在していましたが、これら大学内にある様々な「Making(つくる)」をつ
ないでいこうという取り組みです。また、その中心的なラボとしてFab Labがオープンし、全
学生が自由にデジファブを使ったものづくりができる環境が整いました。私が所属している建
築デザイン学科では2016年からデジファブを取り入れた建築教育を実践してきたが、今後は
全学でデジファブを使った教育や研究を強化していきます。
M-Hubの中心的なラボとしてオープンしたFab Lab
M-Hubの中心的なラボとしてオープンしたFab Lab
また、広工大の母体である鶴学園における「つくる」をつないでいくことも目指しています。
付属高校である広島工業大学高等学校には、3年前にCreative Learning Lab(通称:CLL)が
整備され、「K-STEAM類型」という新たなコースがスタートしました。今回はその1期生が大
学1年生として本学に入学してくるタイミングでもあります。既に彼らはFab Labのアルバイ
ト学生として施設の運営をサポートしています。
3DプリンタはFLASHFORGEの Adventurer5M Proが10台に加えElegooのOrangeStormを
整備
その他にレーザーカッターやUVプリンタなども整備。専門スタッフが常駐しているのも◎
しかし我々がつなごうとしている「つくる」は学園内に留まりません。昨今「高等学校DX加
速化推進事業(DXハイスクール)」などの補助を受けて、高校や中学校にもデジタルファブ
リケーション機器の導入が増えています。しかし、これらを使って何を学ばせるのかに頭を悩
ませているケースは少なくなく、これまでにもいろいろな高校の先生から相談を受けてきまし
た。私以外にも、様々な学科にデジファブを取り入れた授業を行っている教員がいる環境を活
かし、M-Hubを拠点としてデジファブで「つくる」教育についての情報を共有したり、新たな
試みについて議論できるような機会を作っていきたいと考えています。
5月28日にはM-Hubのオープニングイベントが開催されました。ゲストとしてお越しいただい
た慶應義塾大学の田中浩也先生の基調講演に続き、私は大学生に向けたデジファブ教育を、そ
して工大高校の平原豪人先生からは高校生に向けたデジファブ教育について発表し、最後には
デジタルファブリケーション協会の梅澤陽明さんならびにFab Lab安芸高田の渡辺洋一郎さん
に、地域の中のデジファブ教育をご紹介頂きました。TVなどのメディアを含め、大変多くの
方々にご参加いただき、地域や業界からの関心の高さを感じました。
オープニングイベントで基調講演頂いた慶應義塾大学の田中浩也先生
工大高校のデジファブ教育について発表した平原豪人先生
現在は本学の学生の利用に限定している状況ですが、一般利用に向けた準備も進めています。
高校などの教育機関や地元企業だけでなく、デジファブに興味を持つ様々な方々に使ってもら
いながら、最終的には地域のものづくりのHubとなっていけたらと思っています。Hiroshima Making Hubという名前にはそういった想いが込められています。また、2年後の2027年春に
完成予定の新校舎にもデジファブ施設が整備される予定で、今後数年間かけてコミュニティの
広がりと整備の拡張を平行して進めていくことになります。
Fab Labで働く建築デザイン学科の1年生たち
現在の建築やものづくりの教育は、実際につくることからどんどんと距離が離れているように
感じます。デジタル技術の発展により、リアルを伴わない検討やシミュレーションがしやすく
なっていることもその背景にあるでしょう。しかし、実際につくることを目的としたデザイン
や設計を考えるには、つくることから学ぶべきことが沢山あると思っています。また、それは
どれだけデジタル技術やAIが発達しても変わらない部分ではないでしょうか。
建築デザイン学科で行っているデジファブを取り入れた建築教育は、小さなスツールでも良い
からデザインしたものを作ってみること、またはパビリオンでも良いので、設計したものを実
現させてみることに重点を置いています。これを経験している学生とそうでない学生では、考
え方も違えば作るものも違ってくることをこの10年で実感しました。今後は建築に限らず、
様々な分野の「つくる」学生が広工大から社会に飛び出していくことに大きな希望を感じてい
ます。