2025.11.20

パラメトリック・ボイス
　　　　　　　　　　  　　　　　　　　　　　　　東京大学　ソライロ・エルメ

　Unity上で都営地下鉄・都バスのリアルタイムとPLATEAU建物の静的なデータの可視化 — オー
　プンでリアルタイムなデータ公開を通じて、PLATEAUを参加型の都市マネジメントハブへ拡張
　※上記の画像、キャプションをクリックすると公共交通オープンデータのWebサイトへリンク
　　します。

都市データの増殖と都市への影響
現在、私たちはデータの増殖をますます目の当たりにしている。ビッグデータは取得された
データであり、現在では多様なデータタイプへと広がっている。古典的なGPS位置情報から、
時計や指輪といった多様なデバイスで取得される生体データ、さらにはリアルタイムのビデオ
ストリームを分析するアルゴリズムによって検出される人体骨格の関節位置まで多岐にわたる。
都市スケールにおいて、この多様化したデータの豊富さは、「事実上」無限の識別、分析、予
測、シミュレーションの可能性を開き、ピーク状況を予測・防止し、交通機関や公共イベント
における群衆管理のプロセスと資源を最適化することから、極めて多様な商品やサービスの需
給モデル化まで可能にする。
 
実際、過去10年間で、都市は情報技術の変化によって消えることのない影響を受けてきた。イ
ンターネットをスクレイピングしてリアルタイムで価格を統合するアルゴリズムは、グローバ
ルレベルでの観光の大衆化を可能にし、スマートフォンの普及はリアルタイムでの経路最適化
を可能にする—Uber配達、カーシェアリングサービスなど—。公共交通のフィードは、スクー
ターや電動キックボードでのマイクロモビリティの補完サービスの可能性を開き、これらが組
み合わさることで都市中心部への供給の過度な集中と周辺部とのコントラストの拡大を促し、
モビリティや商業のパターンから不動産価値に至るまで深刻な変化を生み出している。
 
しかしながら、そこで増殖し相互作用する技術革新の特権的な舞台であるにもかかわらず、都
市は頻繁に反応的な姿勢を採用し、事後的に有害な影響を緩和しようとして、不十分であるこ
とが判明する場当たり的で非統合的な政策を求めることが多い。実際、デジタル技術の分野に
おいても、統合的管理は都市のより大きな責任となっている。
 
都市データプラットフォームの役割：欧州の事例
都市データプラットフォームは、横断的価値を持つデータを利用可能にすることでセクター間
を連携させ、非効率性を特定し、不足に対応し、公的、民間、学術、市民といった様々なス
テークホルダーによる新しいソリューションやサービスの開発を促進するという意味で、強力
なツールとして確立されつつある。
 
欧州委員会の支援の下、Scalable Citiesが発表した都市データプラットフォームに関する
最新報告書は、様々な欧州都市において異なる程度の成功を収めながら実装されている技術
ソリューションの多様性を伴う、多様化したシナリオを明らかにしている。この報告書は、進
化的で回復力があり、地域の参加者の関与を伴って地方および広域圏の特性に適応した、エコ
システムの強固な基盤として、標準化され相互運用可能なフォーマットに基づき、オープンな
開発の可能性を持つ技術ソリューションの採用を指摘している。
 
オランダのロッテルダムやドイツのハンブルクの事例がそれぞれ異なる形で示すように、地方
レベルおよび広域圏レベルで地域に近い地方自治体は、社会の様々なセクターとの対話者とし
て特権的な立場にあり、データ管理における異なる合理性を調整し、技術的選択とデータの
キュレーション―その起源、公開形態、利用パターン―が、地方および広域圏の経済、公共お
よび民間のステークホルダーとの参加型ガバナンス構造において決定されるデジタルエコシス
テムを形成することができる。
 
PLATEAUの現状と可能性
これらの指摘は、日本のケースにも適用可能であろう。特に、国家プラットフォームである
PLATEAUは、国レベルで標準フォーマットによる高品質なオープン空間データの提供におい
て世界クラスの例であり、申し分のない3D可視化を備えている。しかし、広範な協働体制に
もかかわらず、建物、インフラ、植生、土地用途などの静的で記述的なデータの中央集権的で
均質化された配信への偏りを示している。
 
欧州の成功事例で確認されたように、ステークホルダーの実質的な関与を促進する動的でリア
ルタイムのデータを含め、地方自治体、民間セクター、市民団体の統合を活用して標準化デー
タの多中心的な共有を実現すること—まずODPTのリアルタイム公共交通車両位置情報など、
他のプラットフォームで現在利用可能なデータを組み込むことから始める(図1参照)—は、関
心のレイヤーを多層化し、PLATEAUを起点とするアプリケーションのスペクトルを拡大し、
ユーザーの範囲を広げ、最終的には現在のデータプラットフォームの潜在能力を都市管理ハブ
として活性化させることになるだろう。


ソライロ・エルメ 氏 東京大学生産技術研究所 特任研究員

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