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BIMで設計プロセスをもっと楽しむために
2025.12.16
パラメトリック・ボイス 安井建築設計事務所 村松弘治
■アナログ×デジタルがつくる“新しい建築のかたち”
建築のモノづくりには、プロセスや時間、さらには経験・知見・効率・教育といった多様な要
素が折り重なっている。先のArchi Future 2025の特別セッションでも語られていたが、魅力
的な建築を生み出すためには、こうした要素がバランスよく循環していることが大切なポイン
トだと思う。
私はBIMに関わって約17年になるが、改めて強く感じているのは、「アナログとデジタルが絶
妙に混じり合う瞬間こそ、創造性が最大化される」ということだろう。
■ベテランの“勘”と経験 × 若手のデジタルスキルでBIMの価値を高める
長年現場を見てきたベテラン設計者には、長い時間軸の中で培われた“勘”がある。頭の中で空
間を立体的に組み立て、リスクを察知し、デザインとディテールをまとめ上げていく力はとて
も頼もしいものがある。
一方、若手設計者はデジタルスキルに長け、ツールを使いこなしながら複数の可能性を軽やか
に探り当てていく。このふたつが交わる瞬間にこそ、BIMが持つ本来の価値がいちばん発揮さ
れるのだと感じている。
美土代クリエイティブ特区(今般のJFMAの「最優秀FM賞(鵜澤賞)」 第20回日本ファシリティ
マネジメント大賞(JFMA賞)- JFMA 公益社団法人日本ファシリティマネジメント協会)では、
ベテラン×若手のよるその価値創造ができた良い例であろう。
■ ベテランがBIMを使うと本当に“最強”になる理由
ベテラン設計者がBIMを使うことには、「組織全体をいい方向に動かすような大きなメリット」
がある。
1)素早く質の高い提案ができる
コスト、スケジュール、事業性などのデータと結びつけることで、初期段階から精度の高いア
ウトプットが期待できる。
2)プロセスがシームレスにつながる
ベテランが基本データを管理することで、分業がスムーズになり、組織全体の動きが軽くなる。
3)情報の連携が強化される
図面はコミュニケーションそのもの。BIM上で要素が連動することで、意思疎通の精度が高ま
りやすくなる。
4)ディテールに確実性が生まれる
長年磨いてきた美しさと機能性を、3D視点で確実に形にできるのはBIMの力である。こうした
取り組みが循環し始めると、プロジェクトの質が高まるだけでなく、若手の成長も自然と進み
やすくなる。
■ 若手が成長するために必要なこと
若手設計者の成長には、「自主・自立・自由」という環境が大切だと感じている。
その上で特に重要なのは次の4つである。
1. 俯瞰的な視点をもつ(=プロジェクトマネジメント意識)
2. 多分野を理解し、ディテールまで検討できる力
3. 法規制の基礎知識
4. プロジェクト経験の積み上げ(チェックリスト活用が効果的)
これらを一気通貫で扱えることこそ、BIMの大きな強みである。若いうちから主体的にBIMに
触れることで、成長の密度にも変化がでてくるように思う。
■ アナログ×デジタルが生み出す新しい設計体験
BIMは単なる効率化ツールではなく、“設計者の感性と構想力を引き出すためのパートナー”の
ような存在だと私は思っている。
空間、デザイン、納まり、快適性、都市や自然との関係性・・・こうしたものを多面的に捉え
直し、積極的に絡むことで、これまで見えていなかったものに気づくことがある。
アナログの経験値とデジタルスキル。その双方をつなぐ架け橋こそがBIMである。
BIMをうまく使いこなせれば、建築づくりのプロセスももっと楽しいものになるのではないだ
ろうか。

古さを活かして新しいものを生み出す



























