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コラム

3Dソフトをデザインツールとして使うということ

2019.10.29

パラメトリック・ボイス          隈研吾建築都市設計事務所 名城俊樹

建築を大学で学び始めてから20年余りになる。学生時代から3Dモデルを扱い始めて、現在に
まで至っているが社会人になってからの業務スタイルは一貫して変化していない。もちろん、
ソフトは常に進化しているしPCも相応にパワフルになった。ただ本質的な設計の内容とし
ては、一貫して3Dモデルと模型、モックアップの反復の末に設計をまとめていくスタイルで
ある。

一時期我々の事務所に入所してくるスタッフの中で3Dソフトを扱えない者が多く存在する
世代があった。これは、大学の設計の授業で評価される案やコンペ等で入賞する案にそういっ
たスキルを必要としない案が多くそれに引っ張られてのことではなかったかと思う。入所後
の設計検討のおいては3Dソフトを扱わなければならなくなる中で、彼らも徐々にスキルを上
げて今では他のスタッフと遜色のないレベルにまでなっている。また、学生時代には今のよ
うに気軽にパラメトリックデザインを取り扱うことが出来なかったが昨今出現したいくつか
のソフトでは、かなり気軽にパラメトリックデザインを取り扱うことができるようになった。
これに伴い今まで手間のかかっていたデザイン検討をより簡便に行うことが可能になってい
る。こういった新しいソフトについても、必要に応じて各スタッフが使い始めている。

BIMという言葉が叫ばれて久しいが、堅苦しく捉える必要はなく、デザインの実現に必要なも
のと考えて気軽に触ってみることが必要であると考えている。
学生から研鑽を積む機会があれば良いが、それぞれが建築を学ぶ環境に影響されてなかなかそ
ういった機会を得られないことも多い。とはいえ、上記を見ても分かるように、社会人になっ
てからでも全く遅くはないのである。

他方で3Dソフトを扱えるがゆえにそのソフトの特性に縛られたデザインを行っている様子
も各所で見受けられる。あるソフトでは自由曲面の取り扱いが得意ではなく、それによってそ
ういったデザインを避けるといった状況が発生したり、また別のソフトではランダム性を持っ
たパラメトリックを組むことが得意でなく、ランダムネスを持たないデザインに収束したりと
いうことがあった。

我々が考えているデザインの全てをコンピューター上で実現するには、まだまだソフトもハー
ドも性能が不足している。加えて、素材感や質感といった感覚を本当に感じるには、とにかく
実物を見る、触るということが必要である。ツールに限定されることなく、様々な手法を組み
合わせて使用していくことはこれからも変わらずに必要なことであろう。

名城 俊樹 氏

隈研吾建築都市設計事務所 設計室長