女性としての仕事
2020.08.04
パラメトリック・ボイス ジオメトリデザインエンジニア 石津優子
娘が彼女自身の進路を考え始める10代に入るのはあと10年もないと思うと、時の流れを感じ
ずにはいられません。思えば、自分の幼少期から「大きくなったら何になりたいの」と周りの
大人たちに聞かれていた気がするので、数年で娘も将来について考え始めるのかもしれません。
自分にとっての10代は20年も前の話です。最近、「女性」としての意見というものを仕事で
も聞かれる機会が増えたので、テクニカルな話とは関係ないですが自分が思うことをまとめて
みようと思いました。
私の経験では、小さいころから大きくなったら当然働くものだという教育を受けてきました。
男女によって仕事に差があることも専攻によって男女比が違うこともあまり意識せずに受け入
れていたと思います。振り返ると、高校の進路相談で、ロボット工学などにも興味あると話を
したときに「女性はほぼいないから辞めておいたほうがいい。」と言われて、確かにそれは大
変そうだと何となく選択肢にいれなかったり、大学2年生くらいのころ、進路相談室で「女性
は建設業では辛いから公務員にならないと家庭は持てないよ」と言われて公務員試験の参考書
を先輩から頂いたりしていました。今振り返ると、性別によって選択をしている場面が多く
あったかもしれません。
現在はどうかというと、女性だから何かができる、できないというのは仕事においてはあまり
感じたことがありません。家族の支えがあってこそだと思いますが、男性の方もおそらく、仕
事の終わりに「あー今日も男性としてこういうことができたな!」という感想を持つ方は少な
いと思います。それくらい自分の特性は、自分自身は意識しないものです。鏡を見ないと自分
自身を自分では見えないように、自分の容姿や性別、人種、出生などを意識する瞬間は必ず他
人からそれらを指摘されたり、向こうから意識されることで認識がそちらに向くものです。
子育てにおいては、親としての役割があり、それぞれの家庭の事情で家事分担や育児の割合が
変わります。母親だから育児があるというわけではなく、周りに色々な働き方をしている友人
が多いので、男性の友人も当たり前に家事育児をしています。仕事をセーブしてようが小さい
うちは育児に専念するというのは、女性だけの選択ではないのだなと実感しています。
働き方については、女性が働きやすい環境を整えるということは女性以外も働きやすい環境が
整うことだと考えています。「働きやすい環境」をどう定義するかですが、画一的なロールモ
デルを当てはめるのではなく、それぞれが個々の理想を実現するための選択肢の幅が広い環境
だと個人的には思います。なぜなら、同じ性別でもそれぞれにおいて家庭の環境や状況や本人
のやりたいことが違うので、選択肢を増やすことでしか環境を整えることはできないからだと
思うからです。当然、幅を広げると管理は難しくなります。選択肢を増やすことができる現代
の働き方は、やはりデジタル化のテクノロジーの恩恵だと感じます。データを処理する方法が
変わったので個々に合わせて管理することもやりやすい時代が来たのだと感じます。
女性はこれが得意、これが不得意という傾向は、もしかしたら統計学的にはデータをとれるの
かもしれません。ただし、そこには色々な引力が無意識な選択が介入しています。時代によっ
て善悪という概念も当たり前も大きく変わるのと同じです。自分と同じ特性の多くの人たち、
その特性は性別であったり、出生であったり、人種であったりしますが、その過去の人たちが
その選択をしたからという事実に囚われず、自分の未来を選択したいですし、これから選択を
するであろう子供たちにはそうしてほしいと思います。その選択でマイノリティに属すること
は大変なことかもしれません。しかし、今、私たちに自由や選択肢があるのも、ある特性に
よって差別を受けた上の世代の人たちが戦ってきたおかげです。その選択によって次世代の常
識を更新して、選択肢を広げることができます。
自分の特性としては、女性以外にもマイノリティの属性を多く持っているので、普段はあまり
女性を意識しないですが、組織内でコンピュテーショナルデザインやBIMを始めた人たちが通
るであろう社内のロールモデルなき道というのは、「女性として」ということ以上に挑戦的だ
と感じています。その人たちと一緒に新しい建設業の常識を作ることでより魅力的な業界にす
るための何かしらの手助けができれば良いと願っております。