Bluebeamで推進する審査業務のペーパーレス化と円滑な情報伝達<日本住宅保証検査機構>
2021.12.13
住宅の性能評価において各種図面の審査をし、その評価書などを発行する業務を行っている住
宅性能評価機関の日本住宅保証検査機構。「安心と信頼」を掲げ、年間で数万件以上の審査業
務を実施。日本の住宅に関わる多くの事業者から信頼を集めている。
現在、その審査業務の中で取り組みを進めているのがペーパーレス化による業務のさらなる効
率化である。図面データなどを早く正確に審査を行い、申請者とのやり取りを進めるために選
んだソフトが図面PDFソリューション「Bluebeam Revu」であった。
同ソリューションの各種機能がどのように審査に役立つのか、また現在進めている業務の効率
化などのポイントを交えて、住宅評価部の部長 吉田孝文氏と担当課長 齋藤なつみ氏にお話を
伺った。
住宅性能評価業務での合理化を図り資源の削減へ
日本住宅保証検査機構(以下、JIO)は、国土交通大臣指定の住宅瑕疵担保責任保険法人として
「住宅瑕疵保険」を扱うとともに、同じく大臣登録の住宅性能評価機関として「住宅審査業務」
を行っている。全国に拠点を持ち、これらの業務を通じて住宅の瑕疵低減や技術向上、性能向上
に取り組んでいる。
さて、このうち「住宅審査業務」では “住宅性能表示” “長期優良住宅の技術的審査” “BELS評価”
など幅広い種類の審査を実施しており、この部署で住宅審査の管理業務に携わっているのが、
部長の吉田孝文氏と担当課長の齋藤なつみ氏である。
株式会社日本住宅保証検査機構(JIO)
住宅評価部 部長 吉田 孝文 氏
「審査は、建設会社、建築設計事務所などの事業者らからの申請に対して受け付けを行い、図
面や書類の審査をし、その中で質疑があれば質問を送り、返ってくる図面類を再び審査します。
そこで基準に適合していれば、証明書を交付するというのが一連の流れです」と齋藤氏。
専門性と経験、スピードが求められる仕事である。
これらの申請は、書類の郵送によるものとWebからの申請の2種類がある。齋藤氏は「紙ベー
スで審査は行われます。申請図書を印刷して、紙の図面でチェックをします。Webから申請を
受けた場合でも、PDFファイルをいったん紙に印刷し、その書類をデスクの上に広げて審査に
取り掛かります。物件ごとに異なりますが、審査のための構造計算書や資料などを含めると、
かなりの量の紙を使用します。また、プリンターの前が混雑し、時間をロスしてしまうことも
多々ありました」と課題を語る。
株式会社日本住宅保証検査機構(JIO)
住宅評価部 担当課長 齋藤 なつみ 氏
また、JIOでは半年間で、1万件以上もの審査を行う。1人で1日あたり数件の審査を進める換算
だ。審査は1人が複数の物件を並行して行うため、紙ベースでのチェックの場合、デスクスペー
スを占めてくることも悩みであった。
住宅評価部長の吉田孝文氏も、「審査する書類は、1件あたり300ページ程にのぼることもあり
ます。それが何万件となると、大量の紙を使用することになる。以前より、私たちは業務におい
て資源削減に貢献したいという想いがありました」と振り返る。
そのような中、齋藤氏がこれらの課題の解決に向けてペーパーレス化による業務の効率化を提
言し、本格的な取り組みが始まった。
申請者とのコミュニケーションを確実にする充実した機能
ペーパーレス化を進めていく上で、早速に導入ソフトの比較検討を始めた齋藤氏。単なるデジ
タル化だけでなく、選定の要件として、申請者と審査側のコミュニケーションをよりスムーズ
に行える機能が備わっているかどうかも主眼となったという。これは紙の削減のほか、審査の
際の指摘事項において、情報伝達面にまだ改善の余地があったためだ。
「指摘事項がある場合、修正点を記した補正依頼書をWordやExcelで作成し、そこに伝えたい
ことをテキストで打ち込んでいく作業となります。文章だけでは伝わりにくいこともあり、
例えばAの部分の修正であったけれど、別のBの部分まで直してしまうといったことです」と
齋藤氏。やり取りの回数を重ねると、その分時間はかかり、再び印刷するコストもかかってく
る。そして、最終版の図面だけを保管するため、修正の経緯が不明となってしまう。逆に、こ
の点をよりスムーズに行えるようになれば、生産性の部分や紙の使用量なども改善できるとい
うメリットがある。
そして、いくつかのソフトを比較検討した結果、齋藤氏たちが採用したのはパナソニック ソ
リューションテクノロジーが提供する「Bluebeam Revu(以下、Bluebeam)」だった。
齋藤氏は「Bluebeamで、特に優れていたのが、マークアップ機能です。PDFファイルの図面
上に指摘する範囲を、雲形の囲みマークなどのビジュアルで示しながらテキストを打つことが
でき、どこの何をどう直せばいいのかが伝わりやすい」と語る。
Bluebeamマークアップ使用例
(確認済・OK箇所はレチェック。指摘箇所はクラウドで囲み、コメント入力)
吉田氏も「ほかにも検討したソフトはありましたが、齋藤も言うとおりマークアップ機能は助
かります。文字だけでは位置を指定するだけでも長い文章になり、勘違いが起こることもある。
絵で描けば、どこに言及しているのかが一目瞭然です」とその効果を語る。
Bluebeamは、さまざまな機能があるが、入力した指摘事項に対して、その後の作業状況や検
討内容の経過を追跡できる「進捗管理機能」も備わっており、同機能も効果的だという。齋藤
氏は「業務時には、パラレルに仕事をする必要があります。問い合わせが入って対応するなど、
断続的に他の業務が入ることがあります。審査に戻ったときに、どこまで見ていたのかを思い
出しにくい。その点、Bluebeamではレ点のチェックをすれば見たところの履歴が残るので対
応漏れを防ぐことができます」と説明する。
Web申請の審査など今後さらなるペーパーレス化を目指す
また、吉田氏と齋藤氏がBluebeamの機能でもう一つ、活用を見込んでいるのが、「修正前後
の図面比較」「重ね図」機能である。これは図面に修正を加えた前後を比較し変更点を検出す
るツールだ。
「申請者とのやり取りでは、指摘箇所以外のところにも修正いただく場合もあり、その点をす
べて把握するのは紙だと難しく、申告がないと気付きにくいです」と齋藤氏。これは図面を扱
う業務すべてに言える課題の1つといえるだろう。
「設計変更が審査に関わる部分であると全体の見直しをする必要が生じるので、見落としは防
ぎたいです。これまでの審査では、紙を文字どおり重ね、透かしながら見ることもしていまし
たが、やはり手間がかかっていました。その点、Bluebeamは、画面上で簡単に確認できます」
とメリットを語る。
これまでの指摘事項(文章だけ)
Bluebeamでの指摘事項(画像+文章)
そして昨今のコロナ禍では、ペーパーレス審査のニーズが高まったという。ただWebからの申
請は増えているが、もちろん紙で郵送されてくる申請図面も多い。
そのため「Bluebeamを導入後、申請者からは “質疑で説明にサムネイルが付いているのでわ
かりやすい” という声もいただいています。紙で届く図面への対応も残しますが、補正の回数
が減り、審査の時間が短縮されるメリットを説明しながら、できるだけWebでの申請に誘導し、
社内だけでなく、社外にもIT利用を促せられれば、さらに資源の削減にも貢献できます」と
齋藤氏は前向きだ。
JIOでは各拠点でBluebeamを扱えるよう準備を進めている。クラウドでの図面共有も可能な
ため、今後審査担当者が構造等専門的なスキルを持った人にチェックをしてもらう際に、同じ
図面のデータを共有しながら、互いに確認できる体制を整えていくことも検討しているという。
「働き方が多様化するなかで、クラウド化によってリモートワークも進めやすくなるでしょう」
と二人は柔軟に考える。
さらにJIOでは、来年を目途にデータで受け取る図面については、ペーパーレス化での審査を徹
底する予定だという。吉田氏は、「審査業務の効率は2割ほど向上すると予想しています。資源
を減らすことができ、顧客満足度が上がる。なにより、ペーパーレス化によって審査の精度が
上がることで、住宅性能向上に寄与できればと願っています」と将来を見据える。
「Bluebeam Revu」の詳しい情報は、こちらのWebサイトで。