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コラム

3Dモデルとマシンパワー不足と表現

2026.01.27

パラメトリック・ボイス         隈研吾建築都市設計事務所 名城俊樹

この数年、取り扱う3Dモデルのデータ量が飛躍的に大きくなってきている。
物件規模が大きくなってきている影響もあるが、様々な協力業者から3Dデータを共有してい
ただく機会が多くなってきていることから、それらを我々のモデルに取り込む機会が増えたこ
とで、モデルの密度が上がって来ていることも影響している。

データが大きくなるほど、それぞれのソフトで取り扱うことのできるスケール感が見えてきて
いてそのソフトがCPUに依存するのかGPUに依存するのか等の特性もよく見えて来ている。
古くから使われているソフトほど、マルチスレッドに対応していないコマンドが多かったり、
グラフィック処理にも一部をCPUに依存したりするなど、非効率な面が見えてきている。これ
らのソフトが改善されるのを待っているわけにもいかず、また全ての状況に対応できるように
CPU、GPUともにハイエンドを揃えられれば良いが、昨今の為替の状況やAI市場の活況による
半導体不足もありそういった条件を揃えることができないという難しい状況が生まれている

CGが建築の一般的な設計者や学生が使えるようになってきた90年代後半は、マシンパワーが
極めて不足していてCGを限定的に使いながらも様々に表現を工夫することで新しい表現を生
み出していた(私は体験していないがおそらくCADが導入され始めた80年代にも同じような
状況が発生したいたと想像している)。それが、2010年代以降のCPU、GPU性能の飛躍的な
向上によって、ある意味力業で表現を成り立たせることができるようになっていたが、ここに
来て、久しぶりにマシンパワーが不足する状況を感じるようになってきた。

3DモデルだけではなくAIの活用に際しても3Dモデルの活用と同様の状況を感じている。
十分な活用をするにはGPU性能とメモリ領域が不可欠であるが、そこまでの仕様のハードを用
意することは困難である。特に外出や出張が多い昨今では、ネットワークを使うにしてもアッ
プのスピードがボトルネックになって、十分な活用は難しい。こちらもプロンプトの打ち方
一つで随分と色々な動きが変わるので、工夫が必要であることを痛感している。
表現を行うのに使うツールが変わっているタイミングでは常にハードがソフトを追いかける状
況が生まれていてそれが成熟していくことで様々な表現が実現されていったことを考えると
20年ぶりくらいに過渡期がやってきたような気がしている。我々もその流れに遅れないよう、
常にアンテナを張って工夫を重ねていきたい。

名城 俊樹 氏

隈研吾建築都市設計事務所 設計室長