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設備でBIMを有効活用するための設計初期段階からの
ちょっとした布石
2026.02.03
パラメトリック・ボイス 日本設計 吉原和正
生産性向上に向けた建築生産プロセスのデジタル化が推進されている中で、その中核技術の
一つとしてBIMの普及と活用が急がれています。しかし、設備設計者がBIMを実務の道具とし
て本当に有効活用できているかと問われると、まだ道半ばだと感じている方も多いのではない
でしょうか。
この話題に入る前に、まずBIMの捉え方を少し整理しておく必要があると感じています。
・CADの代替ツールとしてのBIM活用
・成果図書作成を目的とした図面作成手段としてのBIM活用
・干渉チェックを目的とした3DモデリングツールとしてのBIM活用
・数量の自動拾いを目的としたBIM活用
・自動・半自動化ツールとして捉えたBIM活用
・設計ノウハウを組み込み活用するためのBIM活用
・分野間や関係者とのコミュニケーション手段としてのBIM活用
・設計ワークフローとして捉えたBIM活用
・施工に繋げるためのデータ連携目的のBIM活用
・竣工後の運用・維持管理に繋げるためのデータ利活用目的のBIM活用
・データベースとしてのBIM活用
など、BIM活用の目的は実に多様な顔を持っています。
BIMソフトウェアそのものに加え、CDEなどのクラウド環境を含めたソリューションには多様
な機能があり、どの視点でBIMを捉えて活用するかによって、それが実務に生きるかどうかは
大きく変わってきます。
例えば、作図目的だけでBIMを捉えてしまうと、モデリングを得意とするBIMソフトでは手間
がかかる出図体裁の調整に振り回され、設計実務で効率化を実感するには程遠い状況に陥りま
す。
干渉チェックや数量拾いによる概算も、この目的だけでは従来よりも手間が増えることが多く、
設備設計者がBIMに本腰を入れるインセンティブにはなりにくいでしょう。
自動化・半自動化ツールについても、現時点では設計業務全般を網羅するまでには至っておら
ず、部分的なルーチンワークの効率化に留まるケースがほとんどで、しかも、それを実現する
ための事前準備に相応の手間がかかることもしばしばです。
一方で、他分野との調整や施工、運用・維持管理につなげるためにBIMを活用すべきだという
ことは、多くの方が理解しているはずです。しかし、設備設計者にとっては、この目的だけで
は負担が増える一方で、その見返りが見えにくく、試行はできても継続は難しいのが実情では
ないでしょうか。
結局のところ、BIMは単一の目的だけで効果を出すことは難しく、複数の目的で総合的に取り
組んだときにはじめて、効果を実感できるようになるのだと思います。
設備設計者にとっての設計業務の中心は、図面を描いたりチェックしたりすることもあります
が、本質的には、設計の考え方を整理した上で、システム検討、ZEB検討、室諸元の整理、機
器選定、機器表作成といった設計スペックを決めるための業務のはずで、本来合理化すべきな
のは、まさにこの領域なのではないでしょうか。
そのためには、設計情報基盤としてのデータベース的な側面に着目してBIMを捉え直すことが
重要です。その上で、室諸元設定、換気計算、負荷計算、機器選定、機器表作成、動力集計、
省エネ計算といった一連の作業や、設計初期の機械室・シャフト登録にBIMを有効活用するこ
とを、設備設計のBIM活用の本丸にすべきです。その前提の上で、分野間・関係者との円滑な
コミュニケーションや、自動・半自動化ツールの活用、数量自動拾いによる概算算出、施工・
運用・維持管理へのデータ連携といった複合的なBIM活用に繋げていくべきで、このような形
が実現して初めて、設備設計者がBIMに本格的に取り組む意義が見えてくるのではないでしょ
うか。
ただし、ここで大きな課題として立ちはだかり、このデータの流れを阻害しているのが、旧来
の「成果図書」という図面体裁のあり方だと感じています。この体裁がBIMに適した形に合理
化されない限り、途中からCADに切り替えざるを得なくなる場面が多発してしまいます。
BIMに適した図面体裁に合理化し、人中心の図面による伝達から、コンピュータが理解可能な
データによる情報伝達へ主軸を移した設計BIMワークフローに移行することで、ようやくBIM
に取り組む効果を実感できるようになるのではないでしょうか。
では、設備設計においてBIMはどのタイミングから活用すれば良いのか。現状では、設備の
BIM活用は実施設計段階から着手することが多いように見受けられますが、この段階から合理
化や効率化を図ることは容易ではありません。下手をすると、納まりようもない階高や断面計
画に対して、BIMの活用が納まらないことを証明するための不毛な作業に陥いるだけで終わる
かもしれません。
また、設計の途中からBIMを使い始めると、それまで検討していた内容をBIM活用のためのト
レースや情報転記に追われるなど、無駄な作業が発生してしまいます。
これを回避するためには、少なくとも基本設計から、できれば基本計画など設計のさらに初期
段階から、設計情報基盤としてその後につながるデータの形で布石を打っておくことが、BIM
活用を効果的に行うための重要なポイントになります。
しかし、設計初期段階からダクトや配管など細かなオブジェクトを入れ過ぎると、建築プラン
変更に伴う修正作業が増え、かえって作業量が増えてしまうというジレンマもあります。
基本計画や基本設計の段階では、いきなり詳細な設備オブジェクトを入れるのではなく、機械
室やシャフトの陣地取りを行うためのオブジェクトを配置して、建築とのプラン調整を進める
方法が得策だと考えています。建築プランの調整が収束した後に、設備の陣地が確保されてい
ることを確認したうえで、ダクトや配管、ラックなどの詳細なオブジェクトに切り替えていく。
これが、フロントヘビーにならずに、設計初期から設備もBIMを活用するための現実的なポイ
ントになります。

今月(2026年2月)、RUG(JapanRevitUserGroup)からRevitの設備テンプレートと、以前の
コラムで紹介した基本計画や基本設計序盤から活用可能な設備機器の「汎用オブジェクト」を
BIM designで公開します。
この設備テンプレートには、機械室やシャフトの陣地取りを行うためのオブジェクト(設備登
録_PSなど)も格納されています。また、図面体裁についてもBIMに適した設備の実施設計図
作成につながるようにアップデートされています。
そして、この設備テンプレートには、機器表を作成するための仕組みや、概算数量を取得する
ための集計表、FMに受け渡すための集計表など、国内の実情に合わせて設備でBIMを活用する
ための幾つかの仕込みがされています。また、今回は施工でも活用可能な施工用テンプレート
も併せて公開します。
是非手に取って活用してみて下さい。




























