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コラム

SIGGRAPH Asia2025、アートギャラリー

2026.02.17

パラメトリック・ボイス                   GEL 石津優子

2025年12月15日から18日にかけて、香港で開催されたSIGGRAPH Asia 2025に参加しまし
た。


発表と展示の内容は、2025年3月に東京大学で開催されたCAADRIA 2025のワークショップ
公募にて採択された「Ceramic Walls AI」をベースに、アートギャラリー向けに再構成した
ものです。セラミックプリンタ、ジェネラティブデザイン、AIを横断する試みとして、
Generative Tectonics: A Dialogue Between Code and Clay」というタイトルで発表と展
示を行いました。SIGGRAPH Asiaはコンピュテーショナル分野で国際的に影響力の大きいカ
ンファレンスであり、そこで発表・展示の機会を得られたことは自分の実践を振り返るうえ
でも大きな節目になりました。


会場では、建築、アート、エンジニアリング、教育など、さまざまなバックグラウンドを持つ
方々と対話する機会があり、自分たちの実践を異なる視点から捉え直す、貴重な時間となりま
した。

また、CAADRIAで交流した方々や、RobArchで出会った研究者、母校のETH Zurichで知り
合った友人たちと再会することもできました。かつて博士論文を執筆していた人が、いまは香
港で教授として活躍している姿に触れ、時間の流れと、それぞれの歩みを強く意識させられま
した。自分自身のこれまでの仕事を振り返る、よい節目にもなったと感じています。

今回の展示は、KYOTO Design Labの井上智博さん、堀川淳一郎さんと共に行いました。コン
ピュテーシナルデザインを学び始めた15年以上前からの仲間と国際学会の場で再び同じ時
間を共有できたことは、非常に感慨深い経験でした。

一昨年のAutodesk University、昨年のCAADRIAワークショップへの参加を通して、日本で
CAADRIAが開催されたことへの喜びや、久しぶりに国際的な空気に触れる体験ができました。
それらがきっかけとなり去年から少しずつカンファレンス論文の執筆にも挑戦するようにな
りました。
これまで「やってみたいけれど難しそうだ」と感じて距離を置いていたことに、少しずつ手
を伸ばせるようになったのは、大きな変化だったと思います。
普段の業務では、技術支援やプログラム開発といった、ツールを「つくる」ことに集中する時
間が多く、成果を言語化したり、意味づけを行う余裕は限られています。だからこそ、
SIGGRAPH Asiaの展示で、多くの来場者に対して作品の背景や意図を直接説明し、対話でき
たことは、とても嬉しい経験でした。


ふと、2022年に掲載されたArchiFuture Webのコラム「輝くロールモデルは必要ですか」を
読み返しました。当時は、自分の時間を確保することも難しく、意義を感じながらも実利的な
仕事を優先し、多くの挑戦を意識的にセーブしていた時期でした。今振り返ると、そうした状
況の中でも機会を与え、建築情報学会など、こういった広がりへ繋がる活動への参加にむけて
背中を押してくれた方々への感謝の気持ちが、改めて込み上げてきます。

前述のコラムでは「他人と比べない」と書きましたが、一方で、同じように学んだ学友が研究
者として活躍する姿に触れると、学友はもちろんその学友が指導する学生の文章を前にして
自分はまだうまく書けていないと感じる日々の連続ですけれどそれは久しぶりに「初心者」
に戻れた経験でもありました。論文を書くことも読むこともまだ不慣れな自分との差を現実と
して受け止めつつ、2022年当時よりも穏やかに自分の現在地を直視できていることに、自身
の成長も感じました。
 
思えば、建築情報学会会長で、CAADRIAを日本に誘致した東京大学の池田靖史先生とも、学
生時代に出会っていました。堀川さんや井上さんをはじめ、切磋琢磨できる仲間や、分野を牽
引する指導者たちに若い頃に巡り会えたことは、大きな幸運だったのだと思います。同時に、
実務や新しい出会いを経た今だからこそ、アカデミアという場の持つ奥行きや、「学び」とい
う営みの深さを、以前とは異なる感覚で受け止めています。

こうした貴重な経験を一つひとつ積み重ねながら、日々の実務にも引き続き真摯に向き合い、
自分の経験を少しでも社会に還元していきたい。

できる限り自分の内側に閉じこもらず、もう一度、軽やかな気持ちで世界とつながり、コミュ
ニティを広げていける。

そんな一年にできたらと思っています。

石津 優子 氏

GEL 代表取締役