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生産性向上と新たな業務プロセスに向け
建築設備CADの自動作図機能を共同開発<三機工業>
2026.03.16
建築設備業界においてDX化が本格化する中、総合エンジニアリング企業の三機工業と建築設
備専用CAD「Rebro」の開発元であるNYKシステムズとの協働が進んでいる。
両社が2024年12月に発表した自動作図機能の共同開発は、設計プロセスの根本的な変革を目
指す取り組みとして注目される。
加えて、三機工業が独自開発した2D図面から3Dモデルを自動生成するソフトウェア
「S-TRANDIM™」との連携により、建築設備BIMの新たな段階が見えてきた。
この取り組みの背景や現在の開発状況について、三機工業 建築設備事業本部 技術管理本部
BIM推進センターの石丸 直BIM推進部長に詳しく聞いた。
設備の設計と施工をBIMで繋げる
ビルや工場などの建物に各種建築設備を設計・施工・納入する総合エンジニアリング会社であ
る三機工業は、中期経営計画2027のDX戦略で、BIMを生産性・品質向上を実現する最重要
ツールと位置付けている。2016年からRebroを導入した三機工業では、NYKシステムズととも
に部品や部材に関する属性管理と設備機器データに関するモデル合成の合理化を進め、Rebro
の機能向上に取り組んできた。具体的には、機器表などのExcelデータとRebroのデータ連携、
BIMモデルの属性情報から系統図のモデル化を実現する系統管理機能、さらに設備機器周辺の
配管やダクトをセットにしたモデル化などがある。2021年から三機工業ではRebroを同社の
BIMの標準ソフトに位置づけ社内教育を開始し、協力会社も含めた利用拡大と定着化を進めて
いる。

三機工業株式会社
建築設備事業本部 技術管理本部 BIM推進センター
BIM推進部長 石丸 直 氏
定着化を進める中で、同社のBIM推進部長を務める石丸 直氏は「Rebroは施工図作成では高く
評価されていたものの、設計部門からはまだ馴染みが薄く使いづらさが残るとの声が上がって
いた」と明かす。「設計段階での手戻り削減、設計品質の安定化、作図時間の大幅な短縮を実
現するためには、設計フェーズから施工フェーズまでをBIMで一貫して繋げることが必要です。
設計部門でのRebro利用を促進することが不可欠と判断し、その重要課題の一つとして取り組
んだのが自動作図機能です」と石丸氏は振り返る。
この自動作図機能を実現するため、両社の共同開発が2024年12月からスタートした。三機工
業の設備設計図面作成に関する豊富なノウハウと、NYKシステムズの開発力を融合させる取り
組みである。
自動作図機能の革新的な開発内容
自動作図機能の開発は、設計本部とBIM推進センターを中核に、3支社の設計部門、グループ
会社の三機キャドケンドロとで進めている。自動作図したい項目をあげていき、NYKシステム
ズと月1回の定例会議で話し合いながら、優先度を決めて検討を進めている。第一弾として開
発が進められているのは、設計プロセスが明確な「機械排煙設備」である。2025年8月からは
プログラムの検証を開始し、シャフトやメインルートを指定して自動作図できる段階まで進ん
でいるという。

「排煙設備に関する自動作図機能は、建築設備業全体で活用してもらうために、今月にリリー
スされる “Rebro 2026” に搭載される見込みです」と石丸氏は語る。共同開発中の自動設計機
能について、当初NYKシステムズには特定企業向けの専用機能なのかという問い合わせがあっ
たものの、全ユーザー向けの標準機能として開発されていることが伝わると、歓迎の声が多く
寄せられたという。特定のパートナー企業と連携することで、多様なユーザーの意見集約に伴
う停滞を避け、開発を迅速に進められるメリットは大きい。なにより、設備設計図作成におけ
る業務プロセスの改善は、設備業全体の課題を改善する点で意義深い。
「排煙設備で得た知見をもとに、さらに今後は各種配管や電気ラックなどのほかの設備へも展
開する予定です」と石丸氏は今後の展開を語る。開発が進めば、設備の種類を問わず自動作図
が可能になることが予想され、さらなる効率化と品質安定化が期待される。

排煙自動作図_横引きダクト

排煙自動作図_竪ダクト
ここで注目すべきは、三機工業が独自開発した「S-TRANDIM™(エストランディム)」の存
在だ。
「S-TRANDIM」は2Dの設備機器・器具図面データ(DWG、DXF形式)を取り込み、3Dモデ
ルを自動生成するソフトウェアである。この自動作成された3DモデルをIFC形式で出力し、
Rebroに取り込むことができるように開発を進めてきた。
「作図時に、ボイラーや冷凍機などの大型設備機器でメーカーから3Dモデルが提供されてい
ない場合、手作業でモデルを作成する必要があり、大きな負担がかかります。従来は2~7時間
ほどかかっていたモデル作成時間が、S-TRANDIMによって最大で90%削減できました」と
石丸氏は効果を説明する。例として、メーカー提供の2D機器図面を参照しながら基本立体図形
を組み合わせて3Dモデルを手動作成するのに約5時間かかっていた作業が、同じ2D機器図面を
読み込むのに約4分・3Dモデル自動生成に約1分・3Dモデル最適化に約25分と、合計作成時間
が約30分となる。5時間が30分に圧縮されるというインパクトは大きい。

「実際のプロジェクトの設計段階では納期が短くスピードが必要とされる場面は多いですし、
設計変更もあります。実物に近い精巧なモデルというよりは、意図的に簡略化した立体図形で
作成可能なようにしました。これによりデータ量の過大化を防ぐことができます」と石丸氏は
いう。機器のモデルが軽ければ、設備機器搬入時の干渉チェックなどを手軽に行うことができ
る。そして、S-TRANDIMで生成したモデルは、Rebro上で修正や加工が可能な仕様で構成さ
れている。さらに現在はIFC形式を介さずRebroへ直接データを取り込めるよう調整中という。
なお、S-TRANDIMの開発は、AIやソフトウェア開発を得意とする東京大学発のスタートアッ
プ企業(株)WOGOと共同で進めている。
建設業界の未来を見据えた展開と展望
両社の取り組みは、単なるソフトウェア機能の強化にとどまらない。三機工業が目指すのは
「三機工業版デジタルツイン」の実現だ。「企画設計から施工、維持管理、リニューアルまで、
建物のライフサイクル全体でデータを活用する構想です。これにより、建設プロセス全体の生
産性向上と持続可能な社会への貢献を目標としています」と石丸氏は同社のビジョンを語る。
NYKシステムズが開発中のRebroCDE(共通データ環境)も、この構想の重要な要素だ。BIM
データを閲覧するビューアにとどまらず、設備に関わる目線でBIMデータを扱えるプラット
フォームを目指していただきたい。「API連携やAI連携への取り組みに加え、大容量のデータ
でも軽快な動作を実現してほしい」と石丸氏はRebroCDEへの期待を示す。

社内でのRebroの評判は良好だという。「実際に使い始めると “設備分野ではRebroは扱いや
すい” “研修環境への手厚いサポート体制があり社内教育が実施しやすい” といった声が多く
上がっています」と石丸氏はいう。「三機工業としては、社内の標準BIMツールをRebroに
統一する方針で進めていますし、Rebroが設備分野でのデファクトスタンダードになることを
期待しています」と語る。
BIMによる3Dモデルを軸としたプロセス改革は不可避であるとの認識は、高まるばかりであ
る。国土交通省も建設業界のBIM普及のために毎年数十億円規模の予算を計上するなど、支援
を継続している。建設業界のデジタル変革が加速するなか、三機工業とNYKシステムズの共同
開発は、BIMを中心とした新たな業務プロセスの確立に向けた重要な一歩となりそうだ。
「Rebro」の詳しい情報は、こちらのWebサイトで。



























