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コラム

移動体の進化

2020.12.22

パラメトリック・ボイス 

             アンズスタジオ / アトロボテクス 竹中司/岡部文

岡部  車は前と後ろに進むものだという固定観念は、すでに古いものだ。たとえば全方位タ
    イヤは、横方向にも動くことができる。そんなタイヤの動きの進化は、搬送用ロボッ
    トの活躍によって着実に加速している。

竹中  工場や倉庫内を動きまわり指定の商品をピクアプするAGV(Automatic Guided
    Vehicle:無人搬送車)やAMR(Autonomous Mobile Robot:自律走行型 協働搬送
    ロボット)の需要が進むと共に、自在に動ける移動体の活躍が著しいね。

岡部  昨年の国際ロボット展の会場でも、自由に動く移動体の展示を多く見かけた。前後に
    しか動かないと思っていた車が、方向転換することなくスーッと横にスライドしてゆ
    くのを目の当たりにすると、とてもわくわくしたのを覚えている。

竹中  こうしたタイヤの仕組みには、いくつかの種類がある。差動二輪、オムニホイール、
    あるいはメカナムホイールと呼ばれているものがそれだ。例えば任意の方向に移動で
    きるように特別に設計されたオムニホイールは、車輪に複数の樽形状のローラーが車
    軸に対して角度をつけて取り付けられている。

岡部  これらを繊細にコントロールすることによって、前後に加え、車体の向きを固定した
    まま左右へ移動したり斜め方向へと進むことができる。これを実現させている背後に
    は、細やかな駆動を可能にする制御技術の進化がある。

竹中  そうだね。走りながらリアルタイムに地図を描いてゆくナビゲーションマップの構築
    技術や、何台もの搬送ロボットを同時にコントロールするフリートコントロール技術
    など、自律走行を支えている制御技術がスマートファクトリーの実現を可能にしてい
    る。

岡部  これと共に、狭い空間の可能性も広がる。例えば、飛行機の機体といった巨大なもの
    を狭いスペースで移動転回ができるようになる。工場や倉庫に求められる移動体のた
    めの空間デザインも自ずと変わってくる。さらには、細やかな移動の安全性が向上し
    て、人と移動体が協働作業できるようになってきた。

竹中  もちろんこうした流れは、工場内にはとどまらない。近い未来、無人搬送車が街に出
    るようになったとき、現在の都市を支配している道路にはどのような変化が求められ
    るだろうか。日本最古の人工道ができてから2500年ほど経た今私達は次の時代の
    「道」のあり方を考える時期に来ているのかもしれない。

 限られた空間で機体を動かすKUKA omniMove
 ※上記の画像、キャプションをクリックすると画像の出典元のYouTubeへリンクします。

 限られた空間で機体を動かすKUKA omniMove
 ※上記の画像、キャプションをクリックすると画像の出典元のYouTubeへリンクします。

竹中 司 氏/岡部 文 氏

アンズスタジオ /アットロボティクス 代表取締役 / 取締役