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コラム

幸運な出会いは、いつもあなたのすぐそばに

2021.05.18


パラメトリック・ボイス
              スターツコーポレーション /
Unique Works 関戸博高

新しいことをやろうとして、直ぐに上手く出来ることは稀である。特にビジネスのことで誰も
やっていないことを上手くやることは難しい。
50年近く仕事をして来た経験から、その難しさを時間で言うと、発想から競争力のある事業
にまで育てるには8~10年ぐらい必要だ。私が関わった建設業・不動産業のリアルな世界で
は、実際それだけの時間が必要だった。この間の多くの仕事の中で、新しい事業と言えるのは
せいぜい2.5件ぐらいだ。0.5件というのはBIM-FM PLATFORMの事業がまだ道半ばだから
だ。
「新しいこと」にも先達は必ずいる。新しい事業とは、この先達の成果の上にほんの少しの
「新しさ」を加えたり、組み合わせを変えたりして、今までにない商品・サービスを提供し、
新しいマーケットを作り出すことだ。
新しいことを考え出そうとすると、四六時中何かを頭の中で反芻することになる。先達を探し
回ることもする。そんな折に、今までは関係があるとは思っていなかったことが、意味のある
関係にあったことに何故か気付く時がある。例えば幾何学の問題を解く補助線を見つけた時の
ように、またあるものごとの構造と別のものごとの構造とが相似形であることを発見した時の
ように。これを「偶然の幸運(セレンディピティ *1)」というらしい。
 
前置きが長くなったが、最近の「幸運な出会い」について書くことにする。
再開発の関係である街の今後のあり方についてその首長にアドバイスをすることがあった
そのためにスマトシテについて調べていた時その全体像がBIM-EC(BIMデータを使
Eコマース)の全体像の「相似形」であることを発見した。まさに偶然の出会い!
BIM-EC コンソーシアムについては別稿でも書いているが、約3年前からスタートし、コツコ
ツと実証実験を続けてきた。この1月には以下の中間活動報告書もプレスリリースした。
 
BIM-EC コンソーシアム活動報告20210122
 
BIMのデータ連携については、更なる積み重ねと洗練が必要であるが、大筋は見えて来た感じ
がしている。これから必要なのは、BIM-EC システムを経済・金融システムのひとつとして、
社会に受け入れられる体系を持った仕組みにしていくことだ。そんな折、何となくイメージし
ていた全体像が、内閣府の『スマートシティリファレンスアーキテクチャ ホワイトペーパー
2020年3月31日第1版』に記載されている、以下の図表によってより明確化した。この図表の
中の二つの言葉を次のように置き換えれば、その相似形度合いが理解されるはずだ。
スマートシティを「BIMデータ活用領域」へ、都市を「BIM-EC」へ。

 図表1:スマートシティリファレンスアーキテクチュア全体像

 図表1:スマートシティリファレンスアーキテクチュア全体像


 図表2:BIM-ECシステム全体像構築に向けて

 図表2:BIM-ECシステム全体像構築に向けて


 図表3:スマートシティリファレンスアーキテクチュアにおいて定義すべき事項

 図表3:スマートシティリファレンスアーキテクチュアにおいて定義すべき事項


※上記の図表は「内閣府SIP戦略的イノベン創造プログラム/スマトシテリフレン
 スアーキテクチャ ホワイトペーパー 2020年3月31日第1版」より転載及び加筆

この図表をBIM-EC 向けに、ひとつずつ読み解いていく紙幅はないが、ひとつだけBIM-ECを
体系化するに当たって参考になり、よく考えられていると思う点に触れておきたい。それは図
表の中にある「都市マネジメント」と「都市OS」とが、明確に定義づけされている点だ。
ホワイトペーパーには、両者はスマートシティのサービスを支える両輪であるとして、以下の
ように書かれている。
「ITシステムである都市OSだけを導入しても地域のスマトシテ全体をマネジメントする
機能(都市マネジメント)が具備されていなければ、一体感や方向感のあるスマートシティ化
の実現は困難であると考えられるし、反対に適切なタイミングで都市OSを導入しなければ、
サービスやデータはばらばらとなり、当該地域内でも日本全体で考えても効率の良いスマート
シティ化は実現しない。(13頁)」
「都市マネジメント」はリアルな世界、「都市OS」はIT世界のことであるが、同様のことが
BIMデータ活用領域のマネジメントやBIM-ECのOS構築においても言えることだ。大変示唆的
である。
 
現在、BIM-EC システムは深掘り中である。一方でBIM-EC コンソーシアムは、間もなく4期
目を迎える。会員企業との議論は必要だが、そろそろ転換期に来ていると思っている。つまり
マネジメント的には、会員を増やし業種の裾野を広くし(これまでは一業種一社)、一方では
OSやデータベースなど次への水平展開を考える時期に来ている今回書いたスマートシティ
の仕組みとの「幸運な出会い」が羅針盤となり、BIM-EC システムも近い将来構築できること
が予感出来るところまで来た。
 
追伸
スマートシティについては内閣府からいくつかの資料が発行されている。参考までに主要なも
のを記載しておく。いずれにしても扱うのがデータであるという視点からは、スマートシティ
もBIM-FM PLATFORMもBIM-EC も地続きと言って良い従って今回の幸運な出会いは知ら
なかっただけで気付いてみれば、元々ご近所さん同士だったということに過ぎないのかも知れ
ない。
 
スマトシテリフレンスアキテクチ ホワイトペ(日本語版)(2020/4/1更新)
 
スマートシティ・ガイドブック(202104更新)


*1 セレンディピティ(英語: serendipity)とは、素敵な偶然に出会ったり、予想外のもの
を発見すること。また、何かを探しているときに、探しているものとは別の価値があるもの
を偶然見つけること。平たく言うと、ふとした偶然をきっかけに、幸運をつかみ取ることで
ある(Wikipediaより)。
 

関戸 博高 氏

スターツコーポレーション エグゼクティブアドバイザー / Unique Works  代表取締役社長