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コラム

次世代MOBILITY&バッテリー

2023.11.24

ArchiFuture's Eye               ARX建築研究所 松家 克

10月26日に開催した"Archi Future 2023"は、絶好の秋晴れに恵まれ、期待以上の参加数
となり大盛会。嬉しい悲鳴をあげました。当日は、待ちに待ったリアルイベントでしたが
懐かしい顔も確認できアドレナリンが出たのかモチベションが高まった一日でした。
 
今年のArchi Future 2023の企画会議は、例年より早くスタート。「自然とつながる建築」
をテーゼに環境デザインを追求し、今、若い人に注目されている川島範久さんに新委員とし
て今回から参加を願い、依り深く議論を進めた。併せ、今迄の経験と実績に加え、新発想を
と心がけてイベントを構成。参加者の御意見と御要望を踏まえ、デザイン系の増と「Face
to Face」の重要性を強く感じ、早い時期に今年もリアルでと決定した。

現在、デジタル環境は、日本と世界で生成AIのオープン化に伴いBIMやCADの今後に
大きな変貌と変革が想定されている。Archi Futureの実行委員会は、これらを踏まえた重要
な役割の一つが、建築関連でのコンピュテーショナルな対応だと考えている。今年は39社
の展示会への御参加に加え、ブースが約5%増の過去最高数となり、基調講演を始めセミ
ナーとテクニカルフォーラムは更に充実しました。テクニカルフォーラムは4会場となり、
過去最大のスケールで開催今年から国土交通省のご後援も頂き参加者数も前年比で10%
以上の増加で、過去最高となった。

基調講演は、何人かの建築家を候補に委員で意見を交わし、アーキグラムの創設者で世界的
な建築家でもあるイングランドのSir Peter Cookにお願いすることに決定。作品も見たかっ
たのですが、レジェンドとしての建築計画の背景にある其々の国の文化論が主でした。これ
も大変興味深い内容だったと考えていますが、小生も美大の建築学科の卒業なので、リスペ
クトと共に親しみ感がありました。特別対談と特別講演も大変好評でした。

パネルデスカッションは、国土交通省 住宅局 審議官の宿本尚吾氏を中心に各領域のトップ
の方のチャレンジや期待、国の取り組み方も含めてお話し頂き、興味深いディスカッション
となりました。セミナーとテクニカルフォーラムは講座数と会場も増え、AI関連も2講
座。魅力ある講座が多数。楽しく、有意義な一日になったとの多くの声を聞きました。

改めて今年で16年目を迎えるArchi Future 2023のイベントに、ご参加された皆さま、あ
りがとうございました来年もますます充実した内容をと新たな気持ちで企画に取り組みま
すので、今後とも宜しくお願い致します。

さて、本題。
地球環境を考える時、環境対応の先端技術と蓄電池は密接な関係にあることが解る。モビリ
ティ/EV自動車、ドローン、スマホ、PC、次世代飛行機/船舶/船外機/農耕機、住居/生活、
事務所/公共建築などなど、炭酸ガス=CO2を出さない電力エネルギーの用途は広く、世界
中で蓄電池開発に凌を削っている。と書いて2019年に原稿が止まっていたらリチウムイオ
ン電池の開発で吉野彰氏が、ノーベル化学賞を受賞された。と、ここでも再開したコラム原
稿は、又、止まった。そして、今年、2023年のイグノーベル賞は、電気の極により塩の味
わいのコントロール化を目指す箸。塩味から甘味へと対象を変えて研究を続けると記されて
いた。少し怖いが、両極で身体センサーをコントロールし、暑さや寒さを軽減の可能性もあ
るという。この記事で、バッテリーを再度思い起こし、原稿を進めている。

以前にも触れたが、戦時中にロケット燃料開発の一端を任されていた父親もリチウムで悩ま
されたと身近な人に親父の死後に聞かされ、何故に南紀白浜に行ったのかが見えてきた。温
泉の蒸気圧と海水。これと似ているのが、時の変遷と共に見えてくる新発見だ。その一つに
11月3日に新しい独自のAIを発表した50代のイーロン・マスク氏と小生がリスペクトす
る本田宗一郎氏との類似点だ。スペースX、テスラのCEOであるマスク氏は、既成のルール
や常識への挑戦者であり、改革と創造の精神を両氏は持つこのマスク氏の本が出た。本田
氏も50代で開発トップを交代し、次のステージに自分を置いた。時には、水彩画も描かれ
ていた。次々と新しいことに挑戦する二人には、どこか類似点がある。先日、日経の記者か
ら本田氏の件で、再度、取材を受け、本日、日経電子版に記事が出た。今更ながらに改めて
両氏の偉大さを新発見。

現在、EV車は、調査会社マークラインズが纏めた2022年の電気自動車世界販売台数ラ
ンキングによると、日本勢は日産グループの3社連合が7位に入ったのが最高。他の日系
メーカーのシェアはいずれも1%未満。日本勢のEV車市場での出遅れが浮き彫りになって
いる。ホンダが26位、トヨタグループが27位。マツダは29位、SUBARUは31位
にとどまった。首位は米テスラ。2位はBYD(中国)、3位はGM(米国)、4位は
VW(ドイツ)、5位は浙江吉利控股集団(中国)と、米国や中国、欧州メーカーが上位を
占めている。裾野の広い現在のガソリン車産業をEVや水素車に柔軟移行するトヨタの考え
も賛成出来るが、世界トップシェアーを占める日本メーカーのグループ会社や生産体制、部
品網、新サプライチェーンなどへの柔らかな移行が平穏にとの想いもある。
一方、現在、日経産業によると、EV車市場は踊り場にあるという。テスラがピックアップ
タイプの「サイバートラック」の1年にも及ぶ出荷の遅れであり、この遅れはさらに伸びる
可能性が高いともいわれている。フォードやゼネラルなども急速に拡大していた販売台数が
ここのところ停滞している。この環境下で目指す路線の乖離もあり、ホンダとGMの量販モ
デル共同開発が解消された。統計資料では、依然としてHV車のシェアはEV車より大きい。
この低迷脱出のカギは、公共の充電ネットワークの整備と充実だといわれる。朝日新聞によ
れば、テラモーターズが、今後2年間で1千基の急速充電器設置する計画だという。これは、
都内のガソリンスタンド数とほぼ同数。

この厳しい世界と日本の環境の中で、異分野と考えられるSONYがEV業界にホンダと共同
で「AFEELA」を発表した。併せ、サレジオ高専では、一人乗りのEV「VISMO」
を開発し、ロボットなどの開発などで先端技術を担う次世代の人材の育成を図っているとい
う。何れも明るいニュースで、どの様な展開を見せるのか期待したい。

最後に、全世界に共通する課題は食糧とエネルギー、対立・紛争・戦争、地球環境、気候変
動、SDGs、ビジネス・経済と言える。地球環境問題の中で世界の各社が鎬を削る次世代
電池開発。ジャパンモビリティショー2023でトヨタは、変革を支える電動化、知能化、
多様化の新技術を報道陣に再度、集中公開。次世代電気自動車に搭載するのが、急速充電
10分、航続距離1000kmを目指す次世代電池だバッテリーの性能だけでなく、空力や軽量
化などの車両効率向上も見据えている。今の電池に代わる「全固体電池」について、早けれ
ば2027年にEV=電気自動車での実用化を目指す方針も明らかにした。片や水素を燃料にし
た車も強化し複合的で多様的な戦略で脱炭素の取り組みを進める方針。地域の多様性への対
応も重要視し、併せ、その移行を一気にではなく段階的に考えているという。

片やホンダは、再生材利用と太陽光パネル設置車を発表し、カーボンニュートラル化の方向
を示した。マツダは、独自の路線と言える二つのロータリーエンジンで発電し、モーターで
走る量産を目指すスポーツカーを発表。トヨタやホンダ、マツダ、日産などのモビリティ関
連メーカーは、時間軸と近未来を独自の技術で見据え、研究開発を急速に進めているようだ。

追補。昨日の13日、東京で3年ぶりの「木枯らし一号」が吹いた。これから本格的な冬を
迎える北海道での大規模バッテリーセンターの構築も注目されている。注目と言えば、美大
人気は過去最高で求人も絶好調だという。

        講演会会場の様子(撮影:松家 克氏)

        講演会会場の様子(撮影:松家 克氏)


 セミナー会場の様子(撮影:Archi Future 運営事務局)

 セミナー会場の様子(撮影:Archi Future 運営事務局)

松家 克 氏

ARX建築研究所 代表