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コラム

設備BIMの本格普及は省エネ計算連携が鍵を握る

2024.04.09

パラメトリック・ボイス                  日本設計 吉原和正

設備分野においてもBIMの活用が急務となってきており2025年度にはBIM図面審査が開始
されることもあることから、その対応が待ったなしの状況にあります。
 
本来ならば、BIMを活用すれば意匠のBIMモデルから設備が必要な情報を取得でき、設備に
とっても大いにメリットがあり効率化に繋がるはずなのですが、現実はそう簡単にことが運ん
でおらず、設備のBIM普及がそれほど加速度的に伸びていない実情があります。
 
以前のコラムで、基本設計からのBIM活用について、「部屋」さえあれば設備がBIMを有効活
用できるようになるとコメントしましたが、設計の終盤、実施設計での図面化を目的にした
BIM活用においては、意外と効率化とは程遠い状況にあったりします。
 
設備設計のジレンマとしてあるのは建築設備と言うだけあって設備単独で行えることは限
られていて、建築の与件で決まる様々なものに対応することが求められる現実があります。
意匠計画の、部屋名や平面プラン、階高、天井高、ファサード計画、ガラス性能、断熱性能、
ガラリの位置などなど。特に、設備図を作成する上では、意匠の平面図を下敷きにする必要
があるため、意匠が変更する度に、その意匠の平面図と整合した設備計画に見直し、設備図を
修正する必要が生じます。
 
もし、意匠において、意匠の平面図を作成するためのBIMモデリングルールが統一されていれ
ば、それに合わせて、設備が下敷きにする意匠BIMモデルの取り込み方法が構築でき共通化を
図ることが可能なのですが恣意的な表示調整をしていることも多く、自動化とは程遠い状況
にあります。
 
BIM納品が一般化してある程度意匠のBIMモデリングルルのパターンがまとまってくるか、
もしくは、意匠と設備間の図面表現の厳格さをもう少し緩和しないと、設備がBIMを理想的な
形で活用することは難しいのかもしれません。
 
であれば、直近は、設備単独で取り組めるBIM活用を優先して進めるべきなのでしょう。
設備にとって効率化の余地が大きく設備単独である程度取り組めて、すべてのプロジェクト
で必要になる省エネ計算とBIMの連携。特に、設備性能に関わるBEIの算出を主目的にBIMを
活用することが、設備でBIMを普及促進するための鍵になると思われます。
 
(意匠のモデリングルールについては、省エネ計算で必要となるBPI算出に関連する項目を優
先できれば、設備がBIMを効率的に活用する道が開けるはずです)
 
省エネ計算については2024年4月から非住宅の省エネ適合基準が強化され、2025年4月から
はすべての新築住宅・非住宅の省エネ基準適合が義務づけられるため、その対応が設備分野に
おいて大きな課題になっています。
強化された省エネ適合基準をクリアするには、標準入力法などの詳細な計算を行う必要が増え
てくるはずですが標準入力法で計算するには現状1~2ヶ月といった期間とそれなりの経費を
かける必要があるため、これを効率化するニーズは高いはずです。
 
このBIMと省エネ計算の連携については、以前のコラムでも記載しましたが、設備では、設備
機器を中心にオブジェクト標準の整備が進んできていて、省エネ計算の標準入力法等で必要と
なる詳細なパラメータもある程度定義されているので、これをBIMに実装して省エネ計算の連
携を実現することがある程度可能な状況にあります。
 
BIMと連携することにより、今まで省エネ計算を行うために新たに入力し直していた膨大な作
業を効率化することが可能になるはずですし、省エネ適判においても、審査側の負担を減らし
審査の合理化に繋げることも可能になると思われます。
 
BIMと省エネ計算の連携。
この実現が、設備でBIMを普及促進する起爆剤になり、本格的なBIM普及に繋がるのではない
かと期待しているところです。

吉原 和正 氏

日本設計 プロジェクト管理部 BIM室長