AI活用などによる自動化がもたらす
大幅な高効率化の実現<U’sFactory>
2024.04.11
創業時より建設会社や専門工事会社、設計事務所が抱える課題に向き合い、3DCADを活用し
たICTソリューションとDX化を促進するU’sFactory(ユーズファクトリ)。
2023年8月に10周年を迎えた同社はBIM積算・集計システム「BI For Archicad」のアップ
デートを続け、「BI For Archicad」の利活用は実務者のほか、教育の現場でも進んでいると
いう。さらに同社は、AIを活用して構造部材リストを自動で読み取る「AI Structure」もリ
リースした。
同社代表取締役社長の上嶋泰史氏に、「AI Structure」の背景や特徴、また「BI For
Archicad」のツールとして追加された足場計画の自動化について、詳しく話を聞いた。
構造部材リストの読み込みを圧倒的に効率化
2013年にBIM積算・集計システム「BI For Archicad」ローンチとともに起業した
U’sFactoryは、同社10周年となる2023年の11月に「AI Structure」をリリースした。
これは、建築構造図面の構造部材リストをAIの活用で自動で読み込み、枠と内容を自動で設定
し、「BI Structure」にエクスポートするという機能である。
同社代表の上嶋泰史氏は、「鉄筋図作成の自動化については、以前から実装する対象として計
画していました。AIで解析する専門の企業と連携しながら開発は進み、1年ほどかけてようや
くリリースに至りました」。
そもそもの課題として、積算ソフトやBIM関連ソフトに構造部材のデータを入力する際に、構
造計算データの最終版が入力者の手元にないという状況に上嶋氏は着目した。「預かった構造
部材リストのPDFを見ながら、手入力で1つずつすべての情報を入れなければなりません。大
きなプロジェクトになると部材リストは20~30枚になり、入力だけで4日~5日を要します。
手間がかかりすぎてBIM活用自体が止まってしまう事態も起こっていました」。
AI Structureは、Web上のプログラムで動作することが特徴の1つだ。PDFで構造部材リスト
と、例えば基礎の小梁や大梁、柱といった構造物の情報を入れると「AI解析開始ボタン」が出
て、クリックするとAI解析が始まる。15分ほど解析をかけると、一覧表ではAIが読み取った
個所が薄い赤地となって表示される。
表中の枠について見ると、部材に入る鉄筋の位置と本数、鉄筋の種類などの情報が入っている。
もしAIで読み取り損ねた個所や、確認して間違っている個所があれば、追加や修正をしていけ
ばよい。入力作業に1日~3日ほどかかるプロジェクトであれば、30分から1時間程度に作業を
効率化できるという。
「元のリストや図を画像解析で読み取るため、認識率は現在のところ70~90%ほどですが、誰
が読み取って入力しても部材の定義についてはエラーがなく、情報を的確に配置し登録できる
ことにフォーカスしています。そして、一覧表で見ながら確認することについても個人のスキ
ルを問いませんし、ブルーやグリーンのフラグを付けて誰がどこまで見たのかをWeb上のシス
テムの中で登録できます」と上嶋氏はメリットを説明する。リスト図で1ヵ所を修正すると、
該当するほかの部分まで連動して直すことができるといった便利機能も備えている。
「すでにゼネコンなどで導入されていますが、若手作業員を問わない、システマチックな入力
方法が好評です」と上嶋氏はユーザーが実感できる効率化に自信をみせる。
仮設足場の潮流に対応した計画と自動算出機能
そして、U’sFactoryはBI For Archicadのツールとして、次世代足場を簡単に計画・
作成し、発注帳票出力まで連携する機能を2024年2月に新たに追加した。新築や改修工事での
足場は、建築に合わせた計画をするとともに、工程ごとに数量を的確に算出して発注する必要
がある。この作業がいまだに手で行われ、多くの時間が費やされていることに上嶋氏は着目。
また「次世代足場」といわれる製品の普及が進むとともに、足場を拾う手計算が大きな負担に
なっている声が多く聞かれるという。「次世代足場では出隅や入隅での設定と拾い出しを個別
にする必要があり、支柱の高さと使用する材料も一定ではないので、発注するのに手間と時間
がかかってしまいます。それらの作業をきちんと見える化して問題を解決しようと考えまし
た」と上嶋氏は説明する。
実際の操作では、建築物の外形に合わせて足場の範囲を設定すると、どのような足場がどれだ
け必要になるかが算出される。「ポイントは、足場の範囲を簡単に行うことです。布材の既製
品では、足場が1つの面に対して2ヵ所か1ヵ所か、また端部の納まりなどが定まっています。
そして、布材の幅は1,800mm、1,600mm、1,200mmなどと寸法が決まっているので、それ
らに応じてコーナーの位置が決まります。コーナーをきちんと合わせることができれば、入隅
や出隅の設定をしなくてもいいというのが一つのポイントになってきます」と上嶋氏は説明す
る。
また、地面と足場の隙間や足場の高さの調整をするなど、実際的な細かい機能も実装している。
工程をフロア単位で捉え、各階で積み上がっていくことを踏まえて足場の数量と運搬にかかわ
る総重量(kg)まで自動で算出され、発注帳票作成まで可能となっている。足場の製品は
メーカーごとに仕様が微妙に異なるが、国内製造品の情報提供をメーカーから受けながら網羅
し、全国どこでも・誰でも使えるようにするという。
「これまで2Dで図面を描いていた方々には、特に圧倒的な効率化となります。またBIMでは
データを正確に入れないと数字が出ませんが、BI For Archicadで描いた内容で指示すれば、
間違いは出ません。これからの時代は3Dできちんとした指示を短時間で描き、なおかつ正し
い数量を出すことにフォーカスすることが大切です」と上嶋氏は強調する。
ユーザーの側に寄り添い開発とメニューを用意
同社はBI For Archicadのアカデミック版を今年リリースした。「今年の4月から、近畿職業能
力開発大学校でBI For Archicadの3Dモデルを教材にすることが決定しました。RC造でコンク
リートの打設前の躯体について解説する際に、鉄骨の柱・梁や足元のアンカーなどと鉄筋の関
係や配置、継ぎ手の位置などをBI For Archicadでは正確に表現していることが教育に適して
いるという理由です。例えば、幅止め筋は、施工現場では鉄筋をずらして組まれます。ほかの
ソフトではデフォルメしてまっすぐに表示されるところを、AI Structureでは実際に施工され
るように斜めに表示されます」。リアリティかつ正確さを追求した3Dモデルを作成するBI For Archicadが、教材に使われることは興味深い。
そして、BI For Archicadはリリース以来、大手ゼネコンなどのユーザーの声に応えて絶えず
アップデートを続けてきた。「Ver.23のときは年間で1,400件、Ver.25の際は年間で約1,600件
の追加修正項目に対応してきました。さすがに最近は落ち着いてきたのですが、それでも合計
すると7,000件近く追加修正してきたことになります」と上嶋氏は振り返る。
BI For Archicadは国交省の「建築BIM加速化事業」で補助金が受けられることもあって、中堅
ゼネコンをはじめとしてさまざまな分野で導入実績が増え続けているという。
U’sFactoryでは利用する期間や対象建築物の種類によって、さまざまなメニューを設
けてフレキシブルな対応をしている。一式で全機能が使えるサブスクリプションのほか、「専
門業者向けセット」としてオプションを限定するプラン、年額ではなく月額とするプランも用
意。「1ヵ月や3ヵ月の間で実プロジェクトを運用し、社内の稟議を通す企業も多いようです」
と上嶋氏は語る。機能面をはじめ導入や運用面など、さまざまなニーズに地道に応え続ける
U’sFactory。同社の誠実な姿勢により、ユーザーからの信頼はますます大きくなって
いる。
「BI For Archicad」および「AI Structure」の詳しい情報は、こちらのWebサイトで。