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バイブコーディングがBIMの壁を壊す
〜アドイン内製から始まるプロセス改革
2026.09.08
パラメトリック・ボイス 日本設計 吉原和正
生成AIの進化が急速に進む中で、設備設計の業務にもその影響が少しずつ現れ始めています。
特に最近注目されているのが、「バイブコーディング」と呼ばれる、生成AIとの対話を通じて
コードを書かせながらプログラムを開発する方法です。
これまでBIMを活用するためには、BIMソフトウェアの操作を習得することに加え、Dynamo
などの自動化ツールやAPI、プログラミングの知識が必要になる場面がありました。設計者が
「この作業を自動化したい」と思っても、それを実現するためには、専門のプログラマーに依
頼するか、自ら相応のスキルを身につける必要がありました。
そのため、BIMの価値を理解していても、設計者自身が業務に合わせてBIMのツール類を作り
変えていくことは、決して容易ではありませんでした。
ところが、生成AIによって、この状況は変わりつつあります。
例えば、ダクトのルートを探索する、設備器具を一定の条件で配置する、BIMモデルから必要
な情報を抽出する、設計条件に応じてモデルをチェックする、といった処理について、設計者
が自然言語で「こういうことをしたい」とAIに伝えることで、プログラムのたたき台を作れる
ようになってきました。
もちろん、AIが作ったプログラムをそのまま実務で使えるとは限りません。BIMのデータ構造
や設計ロジックを理解し、出力されたコードや結果を確認する必要があります。セキュリティ
への配慮も欠かせません。しかし、設計者自身がまず試してみることができる。この変化は大
きいと思います。
これまでのBIM活用では、設計検討はCADやPDF、Excelなどで行い、その結果をBIMへ反映
するという運用が少なくありませんでした。BIMは情報を蓄積する場所ではあっても、設計を
考える場所にはなりきれていなかったのです。
しかし、設計者自身が業務に合わせたアドインを作れるようになれば、この関係は変わってい
きます。
設備設計では、系統図やシステムフロー、単線結線図などを使いながら設備システムを検討し、
その結果を建物へ配置していく流れが一般的です。こうした設計初期の検討情報をBIM上で取
り扱い、機器選定や配置計画、数量集計などへシームレスにつなげることができれば、BIMは
単なる3Dモデル作成ツールにとどまらず、設計検討を支える情報基盤としての役割を担うこ
とができます。そして今、その実現が現実のものとなりつつあります。
ただし、生成AIによって誰もが自由にアドインを作ることを推奨しているわけではありません。
個々が独自に開発を進めると、類似ツールの乱立や品質のばらつきが生じ、かえって業務が混
乱する恐れがあります。
重要なのは、少数のメンバーで小さく始めることです。BIMや設計業務に詳しいチームが実務
の課題を見出した上で、バイブコーディングでアドインを試作・運用する。その後、他の設計
者にも使ってもらい、得られた意見をもとに改善を重ねていく。この 「小さく始める→使う→
仲間を増やす→改善する」というサイクルが大切です。
一方で、自動化には注意も必要です。AIやBIMが設計判断そのものを代替するわけではありま
せん。設定した条件やロジックが間違っていれば、出力される結果も間違います。最終的な結
果を確認し、その妥当性を判断するのは、あくまで設計者です。
「自動化できること」と「自動化して良いこと」は、同じではありません。
だからこそ、これからのBIM活用では、ソフトウェアを使いこなすことだけでなく、自分たち
の業務に必要な仕組みを自ら考え、試し、改善していくことが重要になるのだと思います。
AIやBIMは設計者の判断を代替するものではなく、判断を支援するための情報基盤です。バイ
ブコーディングという新たな手段を得たことで、設備設計者はソフトウェアの操作に費やす時
間を減らし、より本質的な設計検討や判断、価値創造、他分野とのコミュニケーションに力を
注げるようになるはずです。
BIMにおける生成AI活用は、アドイン作成を出発点として、自らの手で設計プロセスを改善し
続けるための取り組みです。その主体的な取り組みこそが、従来の無駄な作業から脱却し、デ
ジタル化を実務の中で確かなものにしていく原動力になるのではないでしょうか。




























